魔法・罠カードを全く入れず、モンスターカードのみで構築したデッキの総称。
モンスターを全く投入しないデッキである【ドローゴー】とは正反対の位置にあるデッキである。
このデッキのポイントとなるのは、1ターンに1回という召喚回数の制限によって余ってしまう手札の活用方法。
手札からの特殊召喚、手札をコストとして捨てるカード、手札から捨てることで効果を発揮するカード等、「手札」とは様々な行為を生み出す根源でもある。
また、モンスターカードの中には魔法・罠には少ない、墓地で効果を発動するモンスターが数多く存在する。
これらのカードを使うことによって、一般的なデッキとも渡り合える可能性を秘めたデッキとなる。
略称は【フルモン】。
【フルモンスター】の要件は「魔法・罠カードがない」という一点であり、投入するモンスターによって多種多様なデッキタイプに分類できる。(詳細はデッキの種類参照)
このデッキの利点として、《冥府の使者ゴーズ》や《トラゴエディア》等を上手く運用できることがあげられる。
このデッキでは魔法・罠カードを使用せず常に魔法&罠ゾーンが空いているため、相手は《冥府の使者ゴーズ》を警戒せざるを得ないのである。
《トラゴエディア》は自身の効果で特殊召喚が可能な上に、手札のモンスターをコストに発動できる強力なコントロール奪取効果を有している。
これらのモンスターは相手ターンの防御が手薄になりがちというこのデッキの弱点を補う性質もあるため、デッキタイプを問わず採用したい。
《星見獣ガリス/Gallis the Star Beast》 効果モンスター 星3/地属性/獣族/攻 800/守 800 手札にあるこのカードを相手に見せて発動する。 自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、 そのカードがモンスターだった場合、 そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与え このカードを特殊召喚する。 そのカードがモンスター以外だった場合、このカードを破壊する。
《黒薔薇の魔女/Witch of the Black Rose》 チューナー(効果モンスター) 星4/闇属性/魔法使い族/攻1700/守1200 このカードは特殊召喚できない。 自分フィールド上にカードが存在しない場合にこのカードが召喚に成功した時、 デッキからカードを1枚ドローする。 この効果でドローしたカードをお互いに確認し、 モンスターカード以外だった場合、 ドローしたカードを墓地へ送りこのカードを破壊する。
デッキ構築の基本として、上で述べたように手札の利用方法を考える必要がある。
当たり前だが、モンスターの通常召喚は1ターンに1回まで。
デッキの全てをモンスターが占めるため、何らかの形で手札を消費しなければ、手札のほとんどが腐る形となり、危険。
「特殊召喚できるモンスター」「手札誘発」をそれぞれどの程度のバランスで入れるかがデッキの生命を左右する。
特殊召喚できるモンスターはこのデッキにおいては魔法・罠除去カードに近い役割を持つ。
《サイクロン》や《大嵐》が投入できないため、相手の伏せた罠カードは相手に使わせて数を減らすしかないためだ。
《カオス・ソーサラー》に除去罠を踏ませ、本命の《カオス・ソルジャー −開闢の使者−》を通す、といったプレイングが必要となる。
一口に【フルモンスター】と言ってもデッキタイプは非常に多彩であり、それにより投入すべきカードも大きく異なる。
特定のデッキタイプでのみ投入されるカードの紹介はデッキの種類に任せ、こちらでは比較的デッキタイプを選ばず投入できるモンスターを紹介する。
この他、以下の様なカードもモンスターのみで戦う上で役立つだろう。
どんなコンセプトのデッキであれ魔法・罠カードを入れなければ【フルモンスター】となるが、魔法・罠カードがない事のデメリットが重いデッキの場合は【フルモンスター】化する旨味が薄い。
魔法・罠カードに頼らずに展開が行えるデッキは【フルモンスター】化と相性が良いと言える。
手札から大型モンスターを特殊召喚できるデッキや、シンクロ・エクシーズ召喚を安定して行えるデッキは【フルモンスター】化しやすい。
《ライトパルサー・ドラゴン》・《ダークフレア・ドラゴン》の2枚を軸としたタイプ。
元々【カオスドラゴン】は魔法・罠カードの少ないデッキであり、モンスター効果のみで展開できるため【フルモンスター】化に適している。
上記2枚に加え、《輝白竜 ワイバースター》・《暗黒竜 コラプサーペント》・《カオス・ソルジャー −開闢の使者−》・《ダーク・アームド・ドラゴン》など、手札から特殊召喚できるモンスターを豊富に搭載できる。
メイン2枚が手札か墓地で効果を発動するため、【フルモンスター】としては非常に珍しいことに《スキルドレイン》の影響を受けにくい。
ただし、《竜の渓谷》などによる墓地肥やしが行えなくなるため、《クリバンデット》やライトロードなど墓地肥やしモンスターは多めに搭載したい。
手札から特殊召喚できる大型モンスターの代表格《マシンナーズ・フォートレス》を擁する機械族も【フルモンスター】に適している。
特殊召喚可能な素材要員に《トイナイト》、手札誘発に《工作列車シグナル・レッド》を擁しており、どちらも《ギアギガント X》でサーチできる点も使いやすい。
《ギアギガント X》を出すために《レスキューラビット》のギミックを搭載、あるいは【カラクリ】や【ギアギア】要素を搭載など、カスタマイズの幅は広い。
《ジェネクス・ニュートロン》などの光属性をある程度搭載すれば、《サイバー・エルタニン》を切り札として搭載できる。
《A・ジェネクス・バードマン》を《ギアギガント X》でサーチできる事、特殊召喚可能な高レベルモンスターが多い事から、《星見獣ガリス》との相性が良いタイプである。
《百獣王 ベヒーモス》をアドバンス召喚し、《星見獣ガリス》2枚を使いまわすタイプ。
このコンボを行なう以外に獣族と【フルモンスター】に特にシナジーがあるわけではないが、《百獣王 ベヒーモス》のサルベージ対象を増やすためある程度獣族が多いほうが良い。
《森の番人グリーン・バブーン》・《森の狩人イエロー・バブーン》・《虚栄の大猿》などは自己特殊召喚能力を持ち、レベルも高いので《星見獣ガリス》のダメージも高い。
レベルこそ低いものの、《森の聖獣 ヴァレリフォーン》・《子狸ぽんぽこ》・《極星獣タングニョースト》なども優秀な展開能力を持っており、ローレベル軸に寄せても良いだろう。
《ゾンビ・マスター》を軸とし、何から何までモンスターカードであるため、モンスター効果の発動が容易になる。
また、リクルーターの《ピラミッド・タートル》やサーチャーの《ゴブリンゾンビ》も非常に優秀。
墓地で効果を発動できる《馬頭鬼》や《ゾンビキャリア》がいることも心強い。
フルモンスターにすることで、《陽炎獣 スピンクス》の効果を必ず成功させられる。
《星見獣ガリス》のダメージ期待値が高めになる一方で、《陽炎柱》・《陽炎光輪》によるリリース軽減が行えないため、特殊召喚可能なモンスターによるリリース確保がより重要になる。
《聖刻龍−トフェニドラゴン》をリリースして陽炎獣を召喚、レベル6のドラゴン族を特殊召喚してエクシーズ召喚という動きは、モンスターのみで展開が可能でありぜひ採用したい。
アドバンス召喚したモンスターが《陽炎獣 スピンクス》や《陽炎獣 ペリュトン》であれば、更なる展開が可能である。
《陽炎獣 ペリュトン》の手札コストの都合上、ある程度炎属性モンスターの比率が高いのが望ましい。
更にメインデッキとエクストラデッキを炎属性で統一し、《陽炎獣 グリプス》の特殊召喚を可能とするタイプもある。
手札誘発モンスターは《BK ベイル》以外ほとんど使えなくなるため、かなり攻めに特化したデッキとなる。
元々罠カードを積めない【黄泉帝】から更に魔法カードも抜いてしまったデッキ。
《黄泉ガエル》・《粋カエル》・《星見獣ガリス》・《バトルフェーダー》などをリリースし、各種帝をアドバンス召喚して除去を撃つ。
特殊召喚できるカードとしてはこれらリリース要員のほか、効果を使い終わった帝をエクシーズモンスターに変換する《イリュージョン・スナッチ》が活きるだろう。
闇属性・悪魔族モンスターと光属性・天使族モンスターを軸としたデッキ。
最終的な目的は、《天魔神 ノーレラス》の効果を使用し、その後のドロー勝負に持ち込むこと。
確実にモンスターをドローできるため、展開を有利に持っていくことができる。
また、《天魔神 インヴィシル》の魔法・罠カード封印効果はこのデッキとのシナジーが良好である。
【ジャンクドッペル】を【フルモンスター】化したもの。
手札から特殊召喚できる《クイック・シンクロン》・《ドッペル・ウォリアー》により、召喚権を用いずシンクロモンスターの展開が可能。
元々魔法・罠カードの少ないデッキであり、通常の【ジャンクドッペル】とほぼ同じ動きとなる。
【フルモンスター】独自の展開力で1ターンで場に3体のリリース要員を揃え、3体リリースの大型モンスターでフィールドを制圧、または一掃するのを目的とするデッキ。
アドバンス召喚なら《神獣王バルバロス》や三幻神、特殊召喚なら《D−HERO Bloo−D》や《アルカナフォースEX−THE LIGHT RULER》、《アルカナフォースEX−THE DARK RULER》などを扱える。
リリース要員としては前述の特殊召喚モンスターに加え、無条件で特殊召喚できる《ジェスター・コンフィ》、《クイック・シンクロン》などで捨てて特殊召喚できる《魔轟神獣ケルベラル》・《魔轟神ルリー》などが考えられる。
《D−HERO Bloo−D》であれば、《トーチ・ゴーレム》・《俊足なカバ バリキテリウム》・《俊足のギラザウルス》などで吸収先を同時に確保するのもよい。
確実に特殊召喚とバーンを行う事が出来る《星見獣ガリス》を何度も使い回し、シンクロ召喚やアドバンス召喚とバーンで攻める【ビートバーン】風のデッキ。
フィールド上からは《A・ジェネクス・バードマン》や《霞の谷のファルコン》、その両者を併せて使用する事でシンクロ召喚出来る《霞の谷の雷神鬼》等で、墓地からは《百獣王 ベヒーモス》等で、除外からは《次元合成師》等で回収が可能。
デッキからも《キーマウス》、《混沌球体》等で簡単にサーチができて、再利用カードと揃った場合、1ターンに複数回の発動を繰り返し攻撃を行わずに大きなダメージを与えられる。
また、フィールド上に《コアキメイル・デビル》がいれば、《A・ジェネクス・バードマン》と《星見獣ガリス》で無限ループを起こすことができ、1ターンキルができる。
レベル1モンスターをドローした場合、2枚のドローが可能となる《ミスティック・パイパー》でのドローに特化したタイプ。
【金華猫】の構築を尖らせてレベル1モンスターのみとしたものであり、基本的な採用カードはそちらを参照。
《フィッシュボーグ−プランター/Fishborg Planter》 効果モンスター 星2/水属性/魚族/攻 200/守 200 このカードが墓地に存在する限り1度だけ発動できる。 自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。 墓地へ送ったカードが水属性モンスターだった場合、 さらにこのカードを墓地から特殊召喚する。 「フィッシュボーグ−プランター」の効果は 1ターンに1度しか使用できない。
デッキトップが水属性であれば自己再生しつつ墓地肥やしも行える《フィッシュボーグ−プランター》を用いる特殊な【フルモンスター】。
《フィッシュボーグ−プランター》の効果の都合上、水属性以外のモンスターをほとんど投入せず、他の【フルモンスター】とは全く異なる構築となる。
型にはまれば毎ターン《黄泉ガエル》と《フィッシュボーグ−プランター》が自己再生しながら墓地肥やしを行い、墓地アドバンテージを糧に《粋カエル》も自己再生してシンクロ素材・エクシーズ素材を調達し続ける事が可能。
ただし、水属性には手札誘発モンスターが極端に乏しいため、相手ターン中は壁を出して凌ぐ他ないという欠点を抱えている。
このため、相手ターンに動ける数少ない水属性である《ドラゴン・アイス》が非常に重要な立場となる。
―主なカード
森羅の効果でめくったカードを確実に墓地に落とせるよう、デッキのほとんどを植物族モンスターで統一した【森羅】。
一度森羅の効果が起動すれば連鎖的に大量展開が可能な反面、《増草剤》による《ローンファイア・ブロッサム》蘇生などが使えず、安定性は犠牲となる。
採用カード等は【森羅】参照。
《超重武者ホラガ−E》・《超重荒神スサノ−O》等の効果を活かす為に、デッキをモンスターで固めた【超重武者】。
相性のいい《ブラック・ガーデン》や《機甲部隊の最前線》を使えなくなるが、相手の魔法・罠カードを再利用を封じつつ使うことができる。
採用カード等は【超重武者】参照。
「ほぼフルモンスター」の略であり、ごく少数ながらモンスター以外のカードを投入したデッキ。
投入されるのは《大嵐》や【陽炎獣】型の《真炎の爆発》など、1枚で戦況を覆せるような通常魔法・速攻魔法に限られる。
罠カードやフィールド魔法等は、腐っていた《サイクロン》に高確率で破壊されることになる。
【フルモンスター】では対処できない状況で一発逆転を狙う事ができ、高い爆発力が期待できる一方、《星見獣ガリス》などの【フルモンスター】独自のカードに失敗の可能性が発生するため、ハイリスク・ハイリターンとなる。
また、《黒薔薇の魔女》や《フィッシュボーグ−プランター》など、モンスター以外を引いた際に致命的なデメリットが発生するカードとは併用できない。
《魔導雑貨商人》を使う【ワイト】など、【フルモンスター】的ギミックを投入しないデッキでありながら【ほぼモン】となる例もある。
とにかくメタが非常に刺さりやすい。
まず、特殊召喚が軸なので《虚無空間》などで特殊召喚を封じられると機能が停止する。
《スキルドレイン》・《D−HERO Bloo−D》など、モンスター効果を封じられると手も足も出ない。
ほとんどの【フルモンスター】は墓地を利用するため、《マクロコスモス》や《M・HERO ダーク・ロウ》といった除外系カード、《王家の眠る谷−ネクロバレー》などが非常に痛い。
なにより、普通のデッキであればこれらのメタカードに遭遇しても《サイクロン》や《神の宣告》などで対処できるにもかかわらず、【フルモンスター】ではこれらをやすやすと通してしまいやすい点が辛い。
相手はマッチ2戦目以降魔法・罠カード対策をやめ、上記のようなメタカードを投入してくる事は自明の理である。
モンスター効果のみでそれらを凌ぐのは厳しく、マッチ戦には向かない。
むしろ、相手のメタカード投入を見越してサイドデッキを魔法・罠カードのみで構成し、2戦目から戦術をシフトするタイプもある。
場合によっては「モンスター限定」のコンセプトそのものを諦めて、魔法・罠カードを始めから複数枚投入して安定性を高める、という選択肢も考えておきたい。
《始祖竜ワイアーム》は天敵中の天敵であり、冥府の使者カイエントークン以外ではまず突破できない。
また、めったに遭遇することはないだろうが、《ヘル・テンペスト》を食らうとデッキ切れが確定する。
「デッキ全てがモンスター」という概念自体は古くから存在していた。
遊戯王が始まった頃は生け贄召喚の概念が存在せず、完全攻撃力重視だったので、このようなデッキも少なからず流行していた時期もあった。
時が経つにつれカードの効果が重視される時代となり、生け贄召喚という概念が登場してからは瞬く間にこのデッキは姿を消した。
当時としては優秀な効果モンスターも存在せず、「モンスターオンリープレイ」という縛りのデッキにすぎなかったのである。
上記の事を踏まえ、環境の変遷を表すようなデッキと言えるだろう。
公式サイトの「遊戯王OCG カリスマ研究生がゆく!」の筆記試験では、「フルモン」と略した形でデュエル用語とされ、その意味を説明する問題が出題されている。