エクシーズ召喚は、同じレベルのモンスター2体以上をエクシーズ素材として行う、エクストラデッキからの特殊召喚方法の1つ。
このページでは、エクシーズ召喚を主体とするデッキ全般における共通事項について解説する。
他の召喚法と異なり、「【エクシーズ召喚】全般で有用なカード」というものは乏しい。
エクシーズ召喚には、融合召喚における《融合》等、儀式召喚における儀式魔法のような、エクシーズ召喚を行う上で不可欠なカードがない。
このため、融合召喚デッキにおける《沼地の魔神王》、儀式召喚デッキにおける《マンジュ・ゴッド》のような存在が発生し得ない。
また、シンクロ召喚やリンク召喚と比べると、エクシーズ召喚はエクシーズ素材のレベルとエクシーズモンスターのランクが固定的である。
例えばレベル7のシンクロモンスターはレベル3チューナー+レベル4でも、レベル1チューナー+レベル6でもシンクロ召喚できるので、有用なチューナーは幅広いレベルのシンクロモンスターに対し使用できる。
一方でランク4を出すためには、レベル4のモンスターをエクシーズ素材としなければならない。
《ゴブリンドバーグ》はランク4の素材としては有用なカードだが、ランク3を主力とするデッキではエクシーズ素材要員としては全く役に立たない。
この性質上「エクシーズ召喚全般と相性の良いカード」はほとんど存在しないのである。
こうした事情から、エクシーズ召喚を行う上で有用なモンスターは基本的に採用するランクごとに異なる。
ランク別の有用なカードは、各ランクのページを参照。
ただし、例外的にレベルを変動できるモンスターは幅広いランクで採用が可能である。
もっとも、始めからそのレベル帯のモンスターを採用しても事足りるため、レベル変動以外の何らかのメリットも求められる。
以下はその一例である。
【エクシーズ召喚】全般と相性の良いカードは存在しないが、多くの【エクシーズ召喚】に共通するデッキ構築・戦略上の共通事項は存在する。
以下の事項を念頭に置き、主力とするランクによって採用するカードを変えていこう。
―エクシーズモンスター
エクシーズモンスターの層の厚さはランクによって異なる。
層が厚いランク4や8あたりは、除去・アタッカー・制圧・展開要員となるべく役割をばらける様にして幅広い状況に対応できるようにしたい。
枠が足りない場合は環境を見てある程度対応範囲を諦める必要もあるだろう。
一方、層が薄いランクでは対応しきれない範囲が必然的に出てくるため、その点はリンクモンスターや魔法・罠カードで補うと良い。
―リンクモンスター
マスタールール(11期)では新マスタールールのようにリンクモンスターを介さずともエクシーズモンスターを複数展開できる。
従って、現在ではリンク先の確保としての役割ではなく、モンスター効果やステータス、リンク素材の縛りの緩さが採用目的となる。
リンク召喚もエクシーズ召喚もモンスターを並べるという点は共通なので、エクシーズ召喚用のギミックはそのままリンク召喚にも転用できる。
また、エクシーズモンスターもリンク素材にできるので、効果を使い終えたエクシーズモンスターを、展開用に出したリンク2リンクモンスターと共にリンク素材にして、リンク3以上のリンクモンスターを出すこともできる。
【ギミック・パペット】の《ギミック・パペット−キメラ・ドール》、【炎星】の《炎星仙−ワシンジン》のような、そのデッキ専用のリンクモンスターは効果のシナジーが高いので必然的に採用されやすい。
それ以外では、以下の様な役割を持つモンスターも比較的デッキを選ばずに採用しやすい。
エクシーズモンスター全体のサポートカードとしては、特筆すべき物は少ない。
エクシーズと名のつくエクシーズモンスターをサポートする魔法・罠カードは多数存在するものの、全体的に性能は控えめである。
エクシーズ素材を1つ持った状態でエクシーズモンスターを蘇生できる《エクシーズ・リボーン》は比較的性能が高いが、それでも環境レベルで活躍した事はない。
「エクシーズ」カードには《ジェネレーション・フォース》という扱いやすいサーチ手段があるので、「エクシーズ」カードを使用するならばぜひ併用したい。
【魚族】の《エクシーズ・リモーラ》、【希望皇ホープ】の《エクシーズ・チェンジ・タクティクス》等、特定のデッキではキーカード級の活躍をする「エクシーズ」カードもある。
エクシーズモンスターがフィールドに存在することを前提とするカードは、例外なくエクシーズ召喚ができないと腐るという欠点を抱えている。
安定してエクシーズ召喚が可能で、なおかつリターンが大きい場合以外はこうしたカードの採用は避け、むしろエクシーズ素材側をサポートするカードを厚くした方が良い。
例えば戦士族モンスターをエクシーズ素材として採用するなら《増援》を入れる、といった具合で、まずはエクシーズ召喚自体を安定して行うことを重視すべきである。
比較的ランクを選ばず採用できるカードとしては、一定のレベル以下の融合モンスターを特殊召喚できる《簡易融合》・《簡素融合》がある。
前者はレベル1〜5で効果モンスターも出せ、後者はレベル6まで広がっている代わりに効果モンスター以外のモンスターに限定されている。
どちらもライフコスト以外のコストは無い扱いやすいカードだが、エクストラデッキを若干だけ圧迫する点は気に掛ける必要がある。
第11期には永続魔法の《オーバーレイ・ネットワーク》が登場しており、これは比較的多くのデッキで汎用的に採用できる。
1つ目の効果でフィールドと同レベルのモンスターを手札・墓地より特殊召喚でき、エクシーズ召喚そのものをサポートできる。
また、2つ目の効果でエクシーズ素材を手札に回収できるため、召喚・特殊召喚時の効果やエクシーズ素材になった場合の効果を持つものを再利用できる。
どちらの効果もデッキを選ばない汎用性の高さだが、サーチが難しいため依存はせずにギミックの一環程度に捉えておきたい。
【エクシーズ召喚】系デッキ共通の弱点としては、以下のものが挙げられる。
総合的に見ると、「エクシーズ召喚特有の弱点」と言えるのはレベル変動と送りつけ程度で、それもエクストラデッキにある程度リンクモンスターを搭載すれば影響は最小限に抑えられる程度のものである。
この2つ以外の弱点はシンクロ召喚やリンク召喚と共通のものであり、エクストラデッキに重きを置くデッキ共通の弱点と言って良い。
これはすなわち、環境でエクシーズ召喚そのものが流行っていなくても、リンク召喚やシンクロ召喚にメタを張る「ついで」にエクシーズ召喚にもメタを張られてしまうという事でもある。
マッチ戦に挑む際には、エクシーズ召喚メタは常に相手のサイドデッキにあるものと考えて動く事が望ましい。
マスタールール2施行と同時にエクシーズ召喚が実装される。
早々にシンクロ召喚に対する強力なメタ効果を持ち、なおかつ出しやすい《インヴェルズ・ローチ》や《ヴェルズ・オピオン》が登場した事、シンクロモンスターは制限強化が相次いだ事、通常パックにシンクロモンスターが全く収録されなくなった事などの影響で、シンクロ召喚は徐々に環境から駆逐され、エクシーズ召喚一強の状態となっていった。
まず隆盛したデッキは【レスキューラビット】で、《レスキューラビット》から《エヴォルカイザー・ラギア》や《ヴェルズ・オピオン》を出す戦術が流行。
また【甲虫装機】は、展開しつつ除去も行うというシンクロ召喚期にはなかった動きを見せ、圧倒的なアドバンテージ獲得能力で覇を唱えた。
後に質・量ともに圧倒的となるランク4であるが、ランク5が早々に《始祖の守護者ティラス》を獲得する一方で、ランク4は素材3体の《ヴァイロン・ディシグマ》でしかモンスターの除去を行えなかった。
その後暫くは「出しやすいが除去能力の乏しいランク4」「出しにくいが除去が撃てるランク5以上」という棲み分けを行っていく。
第8期の間、環境はエクシーズ召喚一色であったと言って良い。
【アライブHERO】・【ヴェルズ】・【水精鱗】・【炎星】・【アーティファクト】・【先史遺産】等、様々なデッキが入れ代わり立ち代わり環境に現れたが、そのほとんどがエクシーズ召喚を主力としていた。
特に圧倒的な強さを誇ったのが、第8期中盤に現れた【征竜】であった。
レベル7の征竜をあまりにも容易に展開できるこのデッキではランク7エクシーズモンスターが湯水のように展開され、他の【エクシーズ召喚】デッキでは対抗不能なほどの実力差を見せつけた。
【征竜】は度々関連カードの制限強化が行われたため、その全盛期は半年余りに過ぎなかった。
しかしその拡張性の高さから様々なカードを取り込んで規制による穴を埋め、第9期にレベル7征竜すべてが禁止カード指定を受けるまで環境の一角を占め続けるという、非常に息の長いデッキであった。
ちなみに全盛期の【征竜】の唯一の対抗馬であったのが《魔導書の神判》を搭載した【魔導書】であったが、研究が進むに連れて【メタビート】要素を強め、第8期としては珍しくエクシーズ召喚要素をほぼ持たないデッキと化した。
終盤のLEGACY OF THE VALIANTでは《No.101 S・H・Ark Knight》が登場。
対象はやや限定されるものの、遂に素材2体・縛りなしのランク4でモンスター除去が可能となり、その後のランク4の強化に先鞭をつけている。
ペンデュラム召喚の新登場に加え、儀式召喚の【影霊衣】、アドバンス召喚の【帝王】、融合召喚の【シャドール】など、様々な召喚法に強力なデッキが現れ、【エクシーズ召喚】一強の時代は崩れた。
一方でエクシーズ召喚の存在感も大きく、【テラナイト】、【彼岸】、【幻影騎士団】などが現れている。
特に注目すべきは、ペンデュラム召喚との混成デッキ【EMEm】の存在だろう。
ペンデュラム召喚自体は「エクシーズ素材となったペンデュラムモンスターはエクストラデッキへ送られない」という仕様により、エクシーズ召喚よりもシンクロ召喚等と相性の良い召喚法である。
しかし、同レベルのモンスターを複数並べるだけで出せるというエクシーズ召喚の利便性はそれを差し置いても高く、ペンデュラム召喚の展開力を制圧力に変換するのに適していた。
更に、第9期にはランク4エクシーズモンスターが大幅に強化された。
万能除去《鳥銃士カステル》、攻撃力5000を叩き出す《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》、制圧力の高い《フレシアの蟲惑魔》などが相次いで登場。
更に《星守の騎士 プトレマイオス》によりランク5エクシーズモンスターを【ランク4】デッキで扱うことが可能となり、《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》に繋げる戦術が流行した。
加えて「効果は強力だが出しづらい」という評価だった《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》がペンデュラム召喚による展開力増強で容易に出せるようになってしまった。
この結果【EMEm】は凄まじい安定感を持つ先攻制圧デッキと化し、OCG史上稀に見る一強環境の支配者として君臨した。
第9期終盤には、1体の素材でエクシーズ召喚が可能という異常な安定性を持つ【十二獣】が台頭。
純構築も強力であったが出張性能も非常に高く、「環境で戦うなら何デッキを組むにも十二獣が必須カード」という状況と化した。
新マスタールールが導入され、複数体のモンスターをエクストラデッキから並べるためにはリンクモンスターが必須となったため、【エクシーズ召喚】系デッキは大幅に弱体化した。
属性・種族指定のリンクモンスターが出揃うまでは、やむなく《スケープ・ゴート》+《ミセス・レディエント》を入れるなどして、なんとかリンク先の確保を行っているような状況であった。
リンクモンスターの種類が増えた後も手間を要する点には変わりはなく、加えてそのリンクモンスターを並べた方が制圧力・突破力共に高い状況が多く見られた。
結果、第10期ではエクシーズ召喚を主力とするデッキは環境で目立った活躍を殆ど見せず、かつての栄光は影を潜めた。
ただし、特定のエクシーズモンスターを展開や制圧手段の一部として取り入れたデッキは引き続き環境でも活躍していた。
《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》(【守護竜】・【ドラゴンリンク】)、《M.X−セイバー インヴォーカー》(【剛鬼】・【六武衆】)、《外神アザトート》(【未界域】)、《転生炎獣ミラージュスタリオ》(【サラマングレイト】)等が例である。
1ターンキルや先攻制圧に大きく貢献したこれらのカードは日本あるいは海外ではいずれも禁止カードに指定された。
マスタールール(11期)に移行した事でエクストラデッキからの展開に制約が無くなり、第9期以前の展開が再び可能となった。
リンクモンスターを採用するにしてもその数を減らせるようになったため、エクシーズ召喚先の選択肢を増やす事にも繋がる。
第10期終盤の《FNo.0 未来龍皇ホープ》、第11期序盤の《天霆號アーゼウス》と【エクシーズ召喚】全般で使える強力なモンスターたちも登場。
ルール改訂と共に戻った展開力が加わった結果、第10期の間は環境で殆ど見られなかった【エクシーズ召喚】の系列のデッキが再び環境で活躍するようになった。
規制緩和と共に幾分か力を取り戻した【十二獣】、新規カードの登場で力を増した【幻影騎士団】、シンクロ召喚との混合デッキである【電脳堺】等が、2020〜2021年にかけての例である。
その他に高い展開力を持つ【LL】、墓地からカードを離すことをトリガーに一体からエクシーズ召喚をする【エクソシスター】も新規カードで大きくカードパワーを上げたことにより環境で見られるようになり、リンク召喚との混合でそれまでのデッキとは一線を画すカードパワーを持つ【スプライト】、裏側表示除外という非常に再利用の難しい除去を主力とする【クシャトリラ】、発動した効果を受けずターン1制限のない誘発即時効果のデッキバウンスを持つ《エクスピュアリィ・ノアール》による制圧を行う【ピュアリィ】も環境で活躍し、9期以前と同様の隆盛を誇るようになった。