ストラクチャーデッキ−海皇の咆哮−で登場した海皇を軸としたビートダウンデッキ。
メインとなる海皇モンスターは、「水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時」という独特の効果発動条件を持つ。
海皇のカテゴリ化当初は水精鱗の力を借りてこの発動条件を満たす【海皇水精鱗】が主流だったが、《海皇子 ネプトアビス》の登場後は水精鱗割合の低いデッキが主流となり、【海皇】と呼ばれる事が多くなった。
デッキ自体の地力も大幅に上がり、環境で活躍する主流デッキの1つに数えられている。
本項でも《海皇子 ネプトアビス》登場後、環境で活躍するようになった【海皇】を前提に解説する。
「水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時」という海皇モンスターの効果発動条件を満たすため、デッキや手札からモンスターをコストとして墓地へ送る水属性モンスターはこのデッキでは特別な価値を持つ。
その中でも《海皇子 ネプトアビス》の性能は図抜けており、《海皇子 ネプトアビス》を積極的にフィールドに出すことが最重要事項となる。
デッキ全体で《海皇子 ネプトアビス》をサポートし、繰り返しフィールドに出して効果を使いたい。
《海皇の竜騎隊》でサーチできることから海竜族、また《水精鱗−メガロアビス》の手札コストになることから水属性で出来るだけ固めたほうが良い。
「デッキからモンスターを墓地へ送る事で効果を使う」というプレイスタイルの都合上、デッキ構築時にはモンスターカードが多くなりがちである。
魔法・罠カードに割けるスペースは多くないため、シンプルなパワーカードに絞って採用することが求められる。
手札誘発モンスターや《海皇の重装兵》+《キャット・シャーク》などを用いて、相手ターンに無防備になりすぎないように立ち回りたい。
《海皇子 ネプトアビス》の効果でデッキから海皇を墓地へ送り海皇をサーチ、更に墓地へ送った海皇の効果で2枚のアドバンテージを得る、というのが基本的な動き。
《海皇子 ネプトアビス》あるいはそれをリクルートできる《深海のディーヴァ》を常に握っておくことが求められる。
このデッキの大きな強みの1つが、《氷霊神ムーラングレイス》が非常に出しやすい点である。
《海皇の竜騎隊》による海竜族のサーチと、高い墓地調整能力により、下準備なしに《氷霊神ムーラングレイス》を出すルートが多数開発されている。
このデッキにおける《氷霊神ムーラングレイス》は「サーチできる《いたずら好きな双子悪魔》」に匹敵する働きをする。
特に以下のルートであれば、初手に《深海のディーヴァ》が1枚存在するだけで、一切の下準備なく《氷霊神ムーラングレイス》を特殊召喚できる。
また一方で、《水精鱗−メガロアビス》の存在から爆発力も高く、1ターンキルも安定して行えるデッキである。
先攻ならば上記のハンデスを、後攻ならば1ターンキルを目指したい。
多くのデッキが先攻か後攻のいずれか片方を得意とする中、どちらに回っても優位な動きが可能な点はこのデッキの強みの1つである。
最も容易な1ターンキルは以下の方法であろう。
《氷霊神ムーラングレイス》はフィールドを離れるとバトルフェイズがスキップされるというデメリットを持つ。
しかしエクシーズ素材にすればこのデメリットは発生しないので、《氷霊神ムーラングレイス》をランク8のエクシーズ素材にすることで、デメリット回避と戦線強化を可能としたのがこの構築である。
条件として、デッキにレベル3のシンクロン、エクストラデッキに《アクセル・シンクロン》が必要となる。
上記した《深海のディーヴァ》1枚から《氷霊神ムーラングレイス》を出すルートに《アクセル・シンクロン》を組み込む場合、以下の手順となる。
通常の手順と異なる点は太字で表示する。
ランク8のエクシーズモンスターについては、圧倒的な汎用性を持つ《神竜騎士フェルグラント》でよいだろう。
レベル3のシンクロンであるが、《ジャンク・シンクロン》か《スチーム・シンクロン》の二択となる。
《ジャンク・シンクロン》は《海皇の重装兵》を釣り上げてレベル5、《海皇子 ネプトアビス》を釣り上げてレベル4のシンクロ召喚が可能。
特に《海皇子 ネプトアビス》は効果が無効にされていてもコストを支払う事はできるため、海皇の効果を発動させられる。
これに対し《スチーム・シンクロン》は水属性のため、《水精鱗−メガロアビス》の手札コストとして捨てる事ができる。
どちらも一長一短だが、いずれにせよ手札に来るよりデッキに眠っていてもらいたいカードであり、採用枚数はどちらか1枚でよい。
海皇唯一の最上級モンスターである《海皇龍 ポセイドラ》を採用したタイプ。
《海皇龍 ポセイドラ》を使うメリットとして以下の点が挙げられる。
自身の効果での蘇生機会はあまり多くないが、《海皇の重装兵》と《深海のディーヴァ》を併用すればフィールドに水属性3体を並べることは容易である。
リリースした海皇の効果も発動させられるので、状況次第では狙ってみる価値はあるだろう。
【水精鱗】との混成デッキ。
《海皇子 ネプトアビス》の登場以前は海皇のみで海皇の効果発動条件を満たすことが難しく、手札コストを持つものが多い水精鱗との混成が主流であった。
詳しくは【水精鱗】を参照。
《フィッシュボーグ−プランター》を使用するために、デッキのモンスターを水属性で統一した【フルモンスター】。
このデッキでは《ドラゴン・アイス》で《海皇の重装兵》を捨てることが貴重な除去手段となるため、海皇要素は事実上不可欠な存在となっている。
【海皇】は展開に魔法・罠カードをほとんど使用しないため、このデッキのギミックをそのまま採用することも可能。
詳しくは【水フルモン】を参照。
【海皇】は環境の一角に食い込む強力なデッキであるが、それゆえにメタも貼られやすい。
大会に出場する際にはサイドデッキからメタを貼られる事を想定し、場合によってはそれに対するメタを貼りかえすことも必要となる。
主な弱点として以下の点があげられる。
ストラクチャーデッキ−海皇の咆哮−でのカテゴリ化当初は効果の発動条件を満たす方法に乏しかった海皇だが、追うようにして発売されたABYSS RISINGで水精鱗が登場。
「手札を捨てる水精鱗」「捨てられる海皇」という役割分担により、【海皇水精鱗】は環境デッキの1つとなる。
程なくして13/09/01で《アビスフィアー》が制限カードになるも、【炎星】などと環境トップを争う時期が暫く続いた。
LORD OF THE TACHYON GALAXYで征竜が登場。
《瀑征竜−タイダル》および《水征竜−ストリーム》自体は海皇と相性の良いカードだったのだが、それ以上に純【征竜】および【魔導書】が強すぎたために環境から姿を消す。
14/02/01では追い討ちのごとく《海皇の竜騎隊》が制限カードに。
クロスオーバー・ソウルズで《海皇子 ネプトアビス》が登場し、これまで手札から捨てることで発動させてきた海皇の効果をデッキから直接発動させられるようになった。
これにより水精鱗を用いて手札の海皇を捨てる必要性が減少し、水精鱗要素をほとんど排したデッキが主流となる。
【海皇水精鱗】ではなく【海皇】と呼びうるデッキは、事実上この時成立したと言えるだろう。
こうして成立した【海皇】は主流デッキの1つとなり、【海皇】系列は三度環境の一角を占める形となった。