アドバンス召喚に成功した時に効果を発動するカード群「帝」をアドバンス召喚し、相手フィールドを制圧するデッキ。
単純なプレイングで高い勝率を誇り、OCGの基本かつ王道である「除去して殴る」を学べる初心者にも扱いやすいデッキである。
上級モンスターを中心としたデッキであるため、一般的なビートダウンデッキより手札事故を起こす確率は高い。
デッキバランスやプレイングにより、手札事故率を少なくする事ができるかが、勝敗の鍵となる。
なおデッキ名に「コントロール」とついているが、今日では単に【帝】と呼ばれる事がほとんどである。
かつては帝ほど安定して除去を行えるデッキがなかったため、相手フィールドを1ターンに1〜2枚除去して相手の行動を制限するこのデッキは十分に「コントロールデッキ」だった。
現在では同程度の除去能力を持つデッキも珍しくない。
歴史の長いデッキのため、時代によって採用されるカードやデッキ構築は大きく異なっている。
特にストラクチャーデッキR−真帝王降臨−の発売後は、構築・戦術共に別物と言えるほどに変化した。
ここではまず時代によってあまり変わっていない【帝】の基本事項について解説した後、ストラクチャーデッキR−真帝王降臨−によって大きく変化した後の構築を現在主流の構築として解説する。
詳細は下記のデッキの派生とデッキの歴史を参照の事。
ここでは特定の軸に偏らず、【帝】全般についての解説を行う。
帝・最上級帝のそれぞれの効果は帝のページに一覧表があるのでそちらを参照の事。
魔法・罠カードもアドバンス召喚のサポートになるカードを中心に投入したい。
当然ながらアドバンス召喚できないと何もできないので、《生贄封じの仮面》や《霧の王》、《アンデットワールド》に弱い。
一方でリリース要員を特殊召喚できない場合も動きが止まるので、低ステータスモンスターを封じる《王虎ワンフー》や、特殊召喚自体を禁じる《大天使クリスティア》も辛い。
また除去を帝のモンスター効果に依存しているので、モンスター効果を封じる《スキルドレイン》や《エンペラー・オーダー》にも悩まされる。
帝のほとんどは対象を取る除去なので、対象を取る効果に耐性のある相手には手出しが困難である。
また構造的な問題として、相手ターンに打てる手が少なく、相手の行動を阻害するのが難しい。
帝は全員攻撃力2400・守備力1000なので、かつてはコントロール奪取して相打ちにしたり、《月読命》で守備力の低さを突いたりといった手も用いられた。
上級モンスターを多く採用するこのデッキにとって、最大の敵は手札事故である。
帝とリリース要員のどちらかだけが固まれば即事故であり、特に「手札の帝を使い果たしてしまい、リリース要員は出せるものの壁にしかならない」という状況に陥りやすい。
ストラクチャーデッキR−真帝王降臨−で【帝】は大幅に強化され、再び環境で戦えるほどの実力を持つデッキとなった。
ただしその構築・戦略は既存の【帝】とは別物と言えるほどに変化している。
ここではそのデッキの構築と、基本的な戦術を解説する。
長らく帝は上級モンスターのみのシリーズカードであり、デッキに投入される帝以外のカードに「帝」をつけて【黄泉帝】【次元帝】のようにデッキ名をつけるのが一般的であった。
ただ、このデッキのリリース要員は明らかに帝のサポートカードとして作られており、「特定カテゴリとそのサポートカードで統一されたデッキ」という、他のデッキとあまり変わらない構築となっている。
したがって【従騎帝】や【帝王帝】のように呼ばれることはまずなく、プレイヤーからは単に【帝】と呼ばれている。
大きく分けて、エクストラデッキを0枚にして《真帝王領域》で相手のエクストラデッキを封じるタイプと、エクストラデッキを0枚にせず《轟雷帝ザボルグ》で相手のエクストラデッキを破壊するタイプがある。
どちらもエクストラデッキへの干渉方法が異なるだけで基本的な動きは同じなので、必須カードとデッキによって投入されるカードに分けて解説したい。
―その他の採用率が高い帝
以下の帝は、デッキの構築やメタによって採用されうる。
有効な状況は上記した必須カードの帝より限られており、《帝王の開岩》または「《天帝アイテール》でリクルート→手札に戻る」という流れで容易に手札に加えられるので、1枚ずつの採用で十分な働きをする。
―その他のリリース要員
―エクストラデッキについて
基本的にこのデッキではエクストラデッキを使わない。
多くの帝王や「従騎」がエクストラデッキの利用を制限するデメリットを持つため、使おうにも使えないのである。
以下の流れが基本的な動きとなる。
モンスター2体をリリースし、3枚のアドバンテージを得ているので、アドバンテージは差し引き+1。
アドバンス召喚した《天帝アイテール》・《冥帝エレボス》の効果で《汎神の帝王》を墓地へ送って(2)効果に繋げたり、《冥帝従騎エイドス》の(2)効果を考慮すれば、1度のアドバンス召喚につき3枚以上のアドバンテージ増加が見込めると言って良い。
一度この流れを行えば、次ターン以降は墓地の《冥帝従騎エイドス》の(2)効果で《天帝従騎イデア》を蘇生させる事で、毎ターン2体のリリースを供給する事が可能となる。
またアドバンス召喚する帝も《天帝アイテール》・《冥帝エレボス》・《帝王の開岩》によりサーチ・サルベージできるため、極めて安定して最上級モンスターをアドバンス召喚し、アドバンテージを積み重ねられる。
また、このデッキは相手ターンに取れる行動がきわめて豊富である。
《天帝アイテール》や《連撃の帝王》で相手ターン中にアドバンス召喚を行っての行動阻害は、このデッキの防御面を担う重要戦略である。
帝王がデッキ・手札・墓地・除外を複雑に移動する事も相まって、プレイング難度はこれまでの【帝】と比べ格段に高くなっている。
相手のエクストラデッキの活用阻害は、このデッキが他のデッキと渡り合う上での必須事項と言える。
今日のデッキは除去やアタッカーをエクストラデッキのモンスターに依存するものが多く、エクストラデッキさえ封じれば動けなくなるデッキが少なくない。
以下のいずれかの戦略を取り入れることになるだろう。
―《真帝王領域》型
《真帝王領域》で相手のエクストラデッキを封じるタイプ。
エクストラデッキ封じを成立させるまでの容易さが長所。
何らかの上級モンスターをアドバンス召喚し、《真帝王領域》を張るだけでエクストラデッキ封じを行える。
先攻1ターン目からでも安定してエクストラデッキ封じの体勢を作ることが可能。
短所はエクストラデッキ封じが解かれやすい点である。
《サイクロン》等で《真帝王領域》が破壊されても、アドバンス召喚したモンスターが除去されても解除されてしまうので、安定からは程遠い。
アドバンス召喚した帝を1枚でも維持するため、《連撃の帝王》の枚数を増やすと心強い。
また、本来はアドバンス召喚を目的としていない上級モンスター(《EMモンキーボード》など)をアドバンス召喚することでエクストラデッキ封じを解くという抜け道もある。
また、必然的にエクストラデッキは最初から0枚となるため、デュエル開始時点から相手にデッキタイプが筒抜けである。
―《轟雷帝ザボルグ》型
《轟雷帝ザボルグ》で相手のエクストラデッキを破壊するタイプ。
光属性の《天帝従騎イデア》か《真源の帝王》をリリースして《轟雷帝ザボルグ》をアドバンス召喚し、《轟雷帝ザボルグ》自身を破壊。
これにより自分と[[相手]のエクストラデッキからカードを8枚ずつ自分が選んで墓地へ送る事ができる。
この時自分のエクストラデッキから墓地へ送るのは、《旧神ヌトス》3枚と《PSYフレームロード・Ω》3枚、その他適当なモンスター2枚である。
《旧神ヌトス》が墓地に送られた?事で単体除去効果が3回発動し、更に《PSYフレームロード・Ω》の効果で自分か相手の墓地のカードを3枚までデッキに戻すことが可能となる。
《轟雷帝ザボルグ》をアドバンス召喚する必要があるため、エクストラデッキ封じに持ちこむのは《真帝王領域》に比べると難しい。
しかし一度デッキ破壊に成功すれば、相手は《貪欲な壺》でも握っていない限りそれらのモンスターの再利用が不可能となるため、逆転の可能性は大きく制限される。
《旧神ヌトス》による3枚の除去も相まって、成功時のリターンは極めて大きいのが特徴と言える。
旧来の【帝】に比べるとデッキパワーは大幅に上昇し、弱点もその多くを克服した。
アンデット族の《冥帝エレボス》登場により《アンデットワールド》が効きづらくなり、《冥帝エレボス》は対象を取らないため対象耐性持ちも平気となった。
《冥帝エレボス》の(2)効果により手札事故率は減少し、相手ターンにアドバンス召喚できる《天帝アイテール》により相手ターン中の行動はむしろ大の得意となった。
だが全ての弱点を克服した訳ではなく、特に以下の3点は致命的な弱点となりうる。
その他、主力となる帝王に魔法カードが多いため、序盤から魔法カードを封じられた場合も苦しい。
自前で用意するリリースの名称から以下のような型のデッキがある。
それぞれのデッキを組み合わせて、それぞれのリリースを併用してもよい。
リリースに《異次元の生還者》・《異次元の偵察機》を使用する型のデッキ。
詳細は該当ページを参照。
リリースに《黄泉ガエル》を使用する型のデッキ。
詳細は該当ページを参照。
《巨大ネズミ》・《素早いモモンガ》等のリクルーターを多用する。
帝の他にも《森の番人グリーン・バブーン》の特殊召喚を狙うことができる。
詳細は該当ページを参照。
《風帝ライザー》と《鳳翼の爆風》によるドローロックで相手の行動を制限するデッキ。
詳細は該当ページを参照。
《ゴブリンゾンビ》・《ゾンビキャリア》・《馬頭鬼》を中心に、アンデット族を多数採用したデッキ。
《ゴブリンゾンビ》は自身のサーチ効果で、ディスアドバンテージを埋めてくれる。
《ゾンビキャリア》・《馬頭鬼》は、墓地に落ちていれば、いつでもリリース要員を用意できる。
《ゾンビキャリア》はシンクロ召喚に使う事も可能で、ほぼレベル6の帝とは好相性。
専用の蘇生カード、《生者の書−禁断の呪術−》もリリース確保に貢献する。
【アンデット族】に近い構成となる。
多数のカウンター罠を採用、《人造天使》でトークンを生成しリリースを確保するデッキ。
【パーミッション】に準じた構築となる。
大量のトークンをリリースできるため、《昇天の角笛》の採用も望める。
コントロール奪取や蘇生と相性の良い【帝コントロール】と【シンクロ召喚】を組み合わせたデッキ。
アドバンス召喚後、バニラと化す帝モンスターの弱点を、多彩な効果を持つシンクロモンスターで補う形となる。
チューナーでは、《クレボンス》や《サイコ・コマンダー》を採用すれば、《緊急テレポート》とのコンボで、同一ターンのアドバンス召喚とシンクロ召喚も可能。
これだけでは召喚できるシンクロモンスターが限られるため、他のチューナーも採用していきたい。
《黄泉ガエル》を墓地へ送ることが可能な《ジェネクス・ウンディーネ》を用いてチューナーである《ジェネクス・コントローラー》のサーチをするのも良いだろう。
コントロール奪取効果を持つ《レアル・ジェネクス・クロキシアン》等のシンクロモンスターを採用し、更なる帝のアドバンス召喚を狙っても良い。
この他、特殊な組み方として【シンクロン】の上級モンスター軸も参照の事。
ペンデュラムモンスターでリリースを確保してアドバンテージを失わずに帝の効果を使う。
ペンデュラムスケール7のペンデュラムモンスターを使うとリリースを確保できない場合でも、帝を直接展開してアタッカーにできる。
イグナイトや《音響戦士ギータス》などアドバンテージを確保しやすいものを入れておき、大量展開で攻めたいところ。
宝玉獣でリリースを確保するタイプのデッキ。
《宝玉の契約》、《宝玉の導き》が主な採用魔法カード。
宝玉獣は、リリースする場合「魔法&罠ゾーン」に置く効果は使えないので《宝玉の恵み》も使える。
基本的に使う「宝玉獣」は、《宝玉獣 サファイア・ペガサス》と《宝玉獣 トパーズ・タイガー》・《宝玉獣 アンバー・マンモス》の攻撃力が高いモンスターが主になる。
【サモンプリースト】・【バブーン】・【宝玉獣】・【帝コントロール】の複合デッキとも言える。
戦闘耐性を持つ雲魔物をリリース要員とするデッキ。
《雲魔物−タービュランス》による《雲魔物−スモークボール》の大量展開を軸に、帝を展開すると良いだろう。
雲魔物のサポートに関しては、【雲魔物】を参照。
《歯車街》によるアンティーク・ギアを特殊召喚する効果を利用したタイプ。
基本的には、《邪神の大災害》等の自分のカードを破壊する効果でアンティーク・ギアを特殊召喚し、それらをリリースする、というデッキ。
帝には《氷帝メビウス》等、自分のカードも破壊できる効果を持つものも多い。
《光帝クライス》ならかなりのアドバンテージを稼げる。
《死霊の巣》《異次元の偵察機》を用いて墓地の調整及びリリース要員を確保するデッキ。
大量に墓地を除外できるため《ガーディアン・エアトス》と相性がよい。
あらかじめ墓地を肥やす必要があるが、相手のシンクロ召喚をほぼノーコストで阻害できたり、《異次元の偵察機》を好きなタイミングで除外できるため非常に使い勝手がよい。
毎ターンスクラップを蘇生できる《スクラップ・ゴーレム》や自己再生できる《スクラップ・サーチャー》を帝のリリース要員とするデッキ。
詳しくは、【スクラップ】の該当項目を参照。
植物族を採用したデッキ。
《ダンディライオン》や《薔薇の刻印》によるコントロール奪取などによりリリース要員を確保する。
その他、《ヴェルズ・マンドラゴ》・《ナチュル・コスモスビート》や植物族のリクルート・サーチを行う《ローンファイア・ブロッサム》・《ボタニティ・ガール》なども採用できる。
《聖刻龍−トフェニドラゴン》によるリリース確保とリクルート・蘇生効果によるエクシーズ召喚を狙うデッキ。
詳しくは、【聖刻】の該当項目を参照。
アドバンス召喚をサポートする帝の家臣たちをリリース要員として採用したデッキ。
更に《冥帝従騎エイドス》・《天帝従騎イデア》の2枚は家臣とステータスが一致しており、効果もシナジーしている。
また、《氷帝家臣エッシャー》以外の家臣のアドバンス召喚のためにリリースされた場合の誘発効果は、帝のアドバンス召喚成功時の強制効果に直接チェーンして発動させることができる。
そのため、《シューティング・クェーサー・ドラゴン》や《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》等の効果を無効にする誘発即時効果や、《天罰》等のカウンター罠から帝を守ることができる。
ただし、家臣の中には特殊召喚効果の発動条件が初動には使いづらいものもあるため注意が必要。
その点のリカバーとして《バトルフェーダー》等のリリースになれる他の手札誘発モンスターを搭載すると良いだろう。
《雷帝ザボルグ》が第3期の天空の聖域で登場したのをきっかけとして、以降多くの関連カードが収録され続けている。
デュエルが現在ほど高速化しておらず、カード1枚でのアドバンテージが重視された第4〜5期のシンクロ召喚登場以前の環境では、もっとも隆盛したデッキの1つでもあった。
ゲーム初期から栄華を誇り続けた【スタンダード】をメタ外へ追いやった初のテーマデッキでもあり、デッキ構築の定石を根本的に変えた功績を持つ。
当時は優秀な生け贄(リリース)要員が少なかったためかコントロール奪取を軸としていた。
このため、自滅の危険性が高い《雷帝ザボルグ》が敬遠され、《地帝グランマーグ》が優先される時代もあった。
その後《黄泉ガエル》をはじめとした優秀なリリース確保手段が豊富になったため、汎用性で帝を選ぶようになった。
2008年3月1日には《風帝ライザー》が制限カードに指定され、弱体化を受ける。
直後に登場した新システムシンクロ召喚により環境が一気に高速化し、《風帝ライザー》が制限解除となった後も相対的な弱体化により環境から姿を消していた。
ただし、シンクロ召喚というギミック自体はアドバンス召喚した後はバニラ当然となる帝を有効利用できる手段として重宝され、上記の【シンクロ帝】等が誕生している。
2011年にはエクシーズ召喚の導入により、チューナーを無理に投入しなくてもアドバンス召喚後の帝を有効利用できるようになった。
第8期には帝王魔法・罠カードと最上級帝、第9期には家臣が登場し、帝関連のシリーズカードは厚みを増していった。
そして2015年には多くの帝、帝王、家臣に加え、《冥帝従騎エイドス》・《天帝従騎イデア》といった相性の良いカードを詰め込んだストラクチャーデッキR−真帝王降臨−が発売された。
これにより大幅に強化された【帝】は、主流デッキの1つとしてふたたび環境で活躍するようになった。