確率

 確率は様々なゲームで指標として用いられている。
 遊戯王OCGなどのトレーディングカードゲームでは、確率がデッキ構築とプレイングの指標となる。
 ここでは主にデッキ構築に関して、確率の有効な活用法を記述する。
 なお、以下の確率は、高校程度の数学の知識と計算機があれば求められることを明記しておく。

下級モンスター投入枚数

 (表1)は、40枚デッキにおけるデッキ投入枚数と初手に存在する確率をまとめたものである。
 初手存在率とは、『初手5枚+1ターン目のドロー1枚』の6枚の内、1枚以上そのカードが含まれる確率を表す。
 また初手1枚率とは6枚中1枚「だけ」そのカードが含まれる確率、初手2枚率は6枚中2枚「だけ」そのカードが含まれる確率、以下同様となる。

 (表1)より下級モンスターを初手に1枚以上引きたい場合、15枚以上というのが基準となる。
 ただし、初手に1枚以上引くことよりも、初手のモンスター魔法カード罠カードの枚数バランスをとることを優先するならば、期待値が2.00枚に近い13枚、14枚という選択もあり得る。

ガジェットの投入枚数

 手札に被ると本来の力が発揮できないガジェットモンスターの場合、初手に2枚以上存在する確率よりも、初手に1枚だけ存在する確率が重視される。
 (表1)にあるとおり、40枚デッキの場合1枚だけ引く確率が最も高いのが6枚。また、期待値が最も1.00枚に近いのが7枚。よって6枚か7枚が理想的な枚数となる。
 ちなみに(表2)にある通りガジェットを9枚入れた時、1枚だけ引く確率が最も高くなるのはデッキが54枚の時。この場合は期待値も1.00枚ちょうどとなる。
 ただしこれはあくまでガジェットの初手1枚率から見た値。
 デッキに投入される他の効果モンスター除去魔法カード除去罠カードは考慮外のため、単純に54枚の【ガジェット】が強いとは言えない。

2枚と3枚の差異

 デッキ構築において、あるカードを2枚入れるか3枚入れるかの差異は何か?
 当然3枚のほうが初手に存在する確率は高い。では3枚入れられるカードをあえて2枚だけ入れる意味はあるのだろうか。
 (表1)の2枚と3枚の初手2枚率を比較すると、それぞれ1.92%と5.16%となっている。
 2枚投入の場合は初手に2枚被る確率は小さいが、3枚投入の場合は2枚被る確率は起こり得ないことでは無い、となる。
 よって初手に1枚以上存在することよりも、初手に2枚以上存在するリスクを避けることが優先される場合、デッキに投入する枚数は2枚がよい。

影響力は投入枚数>デッキ枚数

 (表3)はデッキ枚数と投入枚数に様々な値を入れた表。
 40枚デッキに2枚投入した場合と41枚デッキに2枚投入した場合の確率は後者が若干小さい。
 40枚デッキに2枚投入した場合と41枚デッキに3枚投入した場合の確率は後者が著しく大きい。
 直感的に明らかなことだがデッキの枚数を40枚から41枚に増やしてもデッキ全体の初手率に与える影響は大きくない。
 しかし、あるカードの枚数を2枚から3枚に増やした場合、そのあるカードの初手率に与える影響は大きい。
 例えば、あるカードをデッキに3枚入れたいと思っているとする。しかしそのカードを入れるとデッキが41枚になってしまう。
 かと言って外すカードも見当たらない。40枚にするため2枚だけ入れるのが良いか、それとも41枚にして3枚すべて入れるのが良いか、という問題があるとする。
 確率の観点から見ると、そのカードが本当に3枚必要かつ外すカードが存在しないならば、41枚にして3枚すべて入れることが正解になる。
 このケースに限らず確率を踏まえたデッキ構築においては、デッキの枚数をぴったり40枚に抑えることよりも、必要なカードが必要な枚数分投入されているかの方がより重要である。

経過ターンによるカード存在率

 (表4)は投入枚数と経過したターンドローフェイズ)という観点から作られた表。

 初手にこのカードを召喚して、あのカードをセットして、このカードが手札に欲しい、あのカードは手札にきて欲しくない。
 TCGに置いて運という要素は排除できないけれども、誰しもが理想的な回りを想像し、実現したいとデッキを組む。
 ここでは各ターンドローする確率というものを把握できれば、各ターンで理想的な回りをするのではないかと考えて考察する。

 コンセプトがはっきりしたデッキを使用する場合、マッチ3戦の内2戦は理想的な回りをして欲しいもの。
 つまり、66.66%以上の確率で手札に欲しいカードがあるというのが理想的なデッキである。
 具体的には初手5枚の時に66.66%以上で欲しいカードがある場合は(表4)から最低8枚のカードが必要となる。
 同様に第1ターン目なら7枚、2ターン目なら6枚、3・4ターン目なら5枚、5・6ターン目なら4枚、7ターン目なら3枚のカードが最低でも必要になる。
 これはおおざっぱに言えば7〜3枚の範囲では投入枚数を1枚増やせば1〜2ターン動くのが早くなるということでもある。
 よって、序盤の数ターンにフィールドの構築や手札を整えるためには1枚の投入差でも決して無視はできないのである。

 一方、投入枚数が2枚なら66.66%以上の確率で手札に来るのは12ターン以降、1枚なら22ターン以降とかなり遅くなってしまう。
 これはキーカード及びそれをサーチできるカードを合計で2枚以下にしてはいけないということ。
 2枚以下のカードはドローを余り期待せず、3戦中1回来るか来ないかが普通、2回以上来たらラッキーと思った方が良い。
 逆に考えれば、序盤から絶対にドローしたくないカードは投入枚数を2枚以下に抑えると余計なドローを減らすことができるということである。

 また、各ターンの投入枚数と期待値については(表5)に記載する通り。
 第1ターン目は7枚、2ターン目は6枚、3ターン目は5枚、4・5・6ターン目は4枚、7ターン目は3枚の時に期待値が1.00に近くなっている。
 これは偶然か必然か、投入枚数が7〜3枚という範囲に収まっているため、各ターンで動くための理想的な投入枚数というものが見えてくる。

 以上を踏まえると7〜3枚の範囲で類似したカード群をデッキに散らすことで理想的な回りを実現できるのではないかという仮定にたどり着いた。
 例えば、自分の第1ターンアタッカー召喚し、罠カードセットしたいならアタッカー罠カードを7枚投入するといった具合である。
 もちろん、両方が揃わない場合もあるがそこはプレイングや他のドローしたカードでカバーすることが重要であろう。

ドローカードを使った時のカード存在率

 また、上記ではドローフェイズ以外のドローについて無視していたが、ドローカードを使用した場合の確率の変動も一緒である。
 (表4)や(表5)に当てはめれば、ドローするターンをより早く迎えることと同義となる。
 具体的には《成金ゴブリン》を使えば次の1ターン《強欲な壺》を使えば次の2ターンをより早く迎えたと同じことになる。
 仮に最序盤の「1ターン目からドローする」ギミックを採用した場合、カード存在率に与える影響は大きいだろう。
 1ターンドローを早めることによって投入枚数に反してカードをドローしすぎる、もしくはドローしないであろうカードをドローしてしまう。
 つまり、ドローカードを使用することで手札事故が起こるという可能性が出て来るのである。
 もし、最序盤から1ドローするようなギミックを採用した場合、カード投入枚数の見直しを計らなければならないかもしれない。
 それは第1ターン目は6枚、2ターン目は5枚、3ターン目は4枚、4・5・6ターン目は3枚、7ターン目は2枚といった具合にだ。
 結果的にドローギミックのスロット分、他のカード投入枚数を減らすと上手く回ってくれるだろう。
 しかし、ドローギミックが確実に作動するとは言えないので、そこから手札事故に繋がってくるというという問題は以前として残るのであるが…。

※以下の記述には、高校数学レベルの内容が含まれています。

 以下の各表の確率計算に用いた式
 デッキ総枚数=x 初手枚数=y デッキ投入枚数=z とする。

(表1) 40枚デッキにおけるデッキ投入枚数と初手率および期待値

デッキ投入枚数123456789
初手存在率15.00%28.08%39.43%49.25%57.71%64.96%71.14%76.39%80.82%
初手1枚率15.00%26.15%34.07%39.07%42.29%43.50%43.28%41.97%39.84%
初手2枚率0.00%1.92%5.16%9.21%13.64%18.12%22.39%26.23%29.51%
初手3枚率0.00%0.00%0.20%0.74%1.71%3.12%4.98%7.24%9.84%
初手4枚率0.00%0.00%0.00%0.02%0.08%0.22%0.48%0.90%1.53%
初手5枚率0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.01%0.02%0.05%0.10%
初手6枚率0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
期待値(枚)0.150.300.450.600.750.901.051.201.35


デッキ投入枚数101112131415161718
初手存在率84.53%87.62%90.18%92.29%94.00%95.39%96.49%97.37%98.06%
初手1枚率37.13%34.03%30.73%27.34%23.99%20.76%17.72%14.90%12.35%
初手2枚率32.13%34.03%35.21%35.66%35.44%34.60%33.22%31.37%29.16%
初手3枚率12.69%15.71%18.78%21.70%24.66%27.26%29.53%31.37%32.74%
初手4枚率2.38%3.49%4.87%6.54%8.48%10.67%13.09%15.69%18.42%
初手5枚率0.20%0.35%0.58%0.91%1.36%1.96%2.73%3.71%4.91%
初手6枚率0.01%0.01%0.02%0.04%0.08%0.13%0.21%0.32%0.48%
期待値(枚)1.501.651.801.952.102.252.402.552.70

(表2) 9枚投入カードにおけるデッキ総枚数と初手率および期待値

デッキ総枚数404244464850525456
初手存在率80.82%78.89%77.01%75.18%73.41%71.70%70.05%68.46%66.93%
初手1枚率39.84%40.72%41.39%41.88%42.23%42.44%42.55%42.57%42.52%
初手2枚率29.51%28.08%26.70%25.38%24.13%22.94%21.82%20.77%19.78%
初手3枚率9.84%8.74%7.79%6.97%6.26%5.63%5.09%4.62%4.20%
初手4枚率1.53%1.27%1.06%0.90%0.76%0.65%0.56%0.48%0.42%
初手5枚率0.10%0.08%0.06%0.05%0.04%0.03%0.03%0.02%0.02%
初手6枚率0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
期待値(枚)1.351.291.231.171.131.081.041.000.96

(表3) 各種デッキ総枚数と投入枚数による初手率および期待値

デッキ総枚数404041414243455059
デッキ投入枚数232333333
初手存在率28.08%39.43%27.44%38.60%37.80%37.04%35.60%32.43%27.94%
初手1枚率26.15%34.07%25.61%33.49%32.93%32.38%31.33%28.96%25.43%
初手2枚率1.92%5.16%1.83%4.92%4.70%4.50%4.12%3.37%2.45%
初手3枚率0.00%0.20%0.00%0.19%0.17%0.16%0.14%0.10%0.06%
期待値(枚)0.300.450.290.440.430.420.400.360.31

(表4) 40枚デッキにおける各ターン数と投入枚数によるカード存在率

デッキ投入枚数12345678
初手5枚のカード存在率12.50%23.71%33.76%42.71%50.66%57.71%63.93%69.39%
自分の第1ターンのカード存在率15.00%28.08%39.43%49.25%57.71%64.96%71.14%76.39%
自分の第2ターンのカード存在率17.50%32.31%44.78%55.22%63.93%71.14%77.09%81.95%
自分の第3ターンのカード存在率20.00%36.41%49.80%60.65%69.40%76.39%81.95%86.32%
自分の第4ターンのカード存在率22.50%40.38%54.50%65.57%74.18%80.81%85.90%89.74%
自分の第5ターンのカード存在率25.00%44.23%58.90%70.01%78.34%84.53%89.08%92.39%
自分の第6ターンのカード存在率27.50%47.95%63.02%74.01%81.95%87.62%91.63%94.42%
自分の第7ターンのカード存在率30.00%51.54%66.84%77.60%85.06%90.18%93.65%95.95%
自分の第12ターンのカード存在率42.50%67.56%82.07%90.31%94.89%97.37%98.69%99.36%
自分の第22ターンのカード存在率67.50%90.00%97.11%99.22%99.80%99.96%99.99%99.99%

(表5) 40枚デッキにおける各ターン数と投入枚数による期待値

ターン数112234456677
デッキ投入枚数766555444343
期待値(枚)1.050.901.050.881.001.120.901.001.100.831.200.90
期待値1枚との差(枚)0.05-0.100.05-0.120.000.12-0.100.000.10-0.170.20-0.10

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