確率

 確率は様々なゲームで指標として用いられている。
 遊戯王OCGなどのトレーディングカードゲームでは、確率がデッキ構築とプレイングの指標となることから、回転手札事故等はデッキ構築の際プレイヤーが意識しなければならないことである。
 ここでは主にデッキ構築に関して、確率の有効な活用法を記述する。
 なお、以下の確率は、高校程度の数学の知識と計算機があれば求められることを明記しておく。

下級モンスター投入枚数

(表1) 40枚デッキにおけるデッキ投入枚数と初手率および期待値

デッキ投入枚数123456789
初手存在率15.00%28.08%39.43%49.25%57.71%64.96%71.14%76.39%80.82%
初手1枚率15.00%26.15%34.07%39.07%42.29%43.50%43.28%41.97%39.84%
初手2枚率0.00%1.92%5.16%9.21%13.64%18.12%22.39%26.23%29.51%
初手3枚率0.00%0.00%0.20%0.74%1.71%3.12%4.98%7.24%9.84%
初手4枚率0.00%0.00%0.00%0.02%0.08%0.22%0.48%0.90%1.53%
初手5枚率0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.01%0.02%0.05%0.10%
初手6枚率0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
期待値(枚)0.150.300.450.600.750.901.051.201.35


デッキ投入枚数101112131415161718
初手存在率84.53%87.62%90.18%92.29%94.00%95.39%96.49%97.37%98.06%
初手1枚率37.13%34.03%30.73%27.34%23.99%20.76%17.72%14.90%12.35%
初手2枚率32.13%34.03%35.21%35.66%35.44%34.60%33.22%31.37%29.16%
初手3枚率12.69%15.71%18.78%21.70%24.66%27.26%29.53%31.37%32.74%
初手4枚率2.38%3.49%4.87%6.54%8.48%10.67%13.09%15.69%18.42%
初手5枚率0.20%0.35%0.58%0.91%1.36%1.96%2.73%3.71%4.91%
初手6枚率0.00%0.01%0.02%0.04%0.08%0.13%0.21%0.32%0.48%
期待値(枚)1.501.651.801.952.102.252.402.552.70

 (表1)は、40枚デッキにおけるデッキ投入枚数と初手に存在する確率をまとめたものである。
 初手存在率とは、「初手5枚+1ターン目のドロー1枚」の6枚の内、1枚以上そのカードが含まれる確率を表す。
 また初手1枚率とは6枚中1枚「だけ」そのカードが含まれる確率、初手2枚率は6枚中2枚「だけ」そのカードが含まれる確率、以下同様となる。

 (表1)より下級モンスターを初手に1枚以上引きたい場合、15枚以上というのが基準となる。
 ただし、初手に1枚以上引くことよりも、初手のモンスター魔法カード罠カードの枚数バランスをとることを優先するならば、期待値が2.00枚に近い13枚、14枚という選択もあり得る。

ガジェットの投入枚数

(表2) 9枚投入カードにおけるデッキ総枚数と初手率および期待値

デッキ総枚数404244464850525456
初手存在率80.82%78.89%77.01%75.18%73.41%71.70%70.05%68.46%66.93%
初手1枚率39.84%40.72%41.39%41.88%42.23%42.44%42.55%42.57%42.52%
初手2枚率29.51%28.08%26.70%25.38%24.13%22.94%21.82%20.77%19.78%
初手3枚率9.84%8.74%7.79%6.97%6.26%5.63%5.09%4.62%4.20%
初手4枚率1.53%1.27%1.06%0.90%0.76%0.65%0.56%0.48%0.42%
初手5枚率0.10%0.08%0.06%0.05%0.04%0.03%0.03%0.02%0.02%
初手6枚率1.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%
期待値(枚)1.351.291.231.171.131.081.041.000.96

 手札に被ると本来の力が発揮できないガジェットモンスターの場合、初手に2枚以上存在する確率よりも、初手に1枚だけ存在する確率が重視される。
 (表1)にあるとおり、40枚デッキの場合1枚だけ引く確率が最も高いのが6枚。
 また、期待値が最も1.00枚に近いのが7枚。
 よって6枚か7枚が理想的な枚数となる。
 ちなみに(表2)にある通りガジェットを9枚入れた時、1枚だけ引く確率が最も高くなるのはデッキが54枚の時。
 この場合は期待値も1.00枚ちょうどとなる。
 ただしこれはあくまでガジェットの初手1枚率から見た値。
 デッキに投入される他のカード達のカードパワーは考慮外のため、単純に54枚の【ガジェット】が強いとは言えない。
 デッキが14枚も増えるということは相対的にやや弱いカードも採用する必要が出てくるため熟考が必要となる。

2枚と3枚の差異

 デッキ構築において、あるカードを2枚入れるか3枚入れるかの差異は何か?
 当然3枚のほうが初手に存在する確率は高い。
 では3枚入れられるカードをあえて2枚だけ入れる意味はあるのだろうか。
 (表1)の2枚と3枚の初手2枚率を比較すると、それぞれ1.92%と5.16%となっている。

 確率の議論において、一般にあるパラメータに対してそのパラメータのある値から無限大もしくは0の範囲あるいは値が2つあり、その各々の無限大、もしくは0の範囲に対する確率曲線の積分値が5%未満の値のことを棄却域といい、それ以外の範囲について起こる可能性があることが示唆される。
(この示唆とは「起こらないとは言えない」という二重否定であり、あくまでも肯定ではないことに注意しなければならない)。
 確率の議論においては5%の範囲に入るかどうかというのはひとつの目安になる。

 したがって、2枚投入の場合は初手に2枚被る確率は十分小さいが、3枚投入の場合は2枚被る確率は起こり得ないことでは無い、となる。
 このことから初手に1枚以上存在することより、初手に2枚以上存在するリスクを避けることが優先されるなら投入する枚数は2枚がよいといえる。

 結論を言えば、初手に複数枚ドローするのが好ましくないカードは2枚投入、複数枚ドローしてでも欲しいカードは3枚投入が推奨される、ということである。

2枚と1枚の差異

 デッキ構築において、あるカードを1枚入れるか2枚入れるかの差異は何か?
 当然2枚のほうが初手に存在する確率は高く、そのカードが手札に欲しい場合は2枚の方が良い。

 それ以外の違いを挙げる場合、デッキ内のカード存在率に差異がある。
 (表1)の1枚の初手1枚率と2枚の初手2枚率を比較すると、それぞれ15.00%と1.92%となっている。
 これは言いかえれば前者は15.00%、後者は1.92%の確率でデッキ内にカードが存在しないということである。
 「2枚と3枚の差異」の記述にあるように5%を目安にするならば、デッキ内存在率を高めたい場合は1枚よりも2枚かそれ以上の方が良い、と言える。

 特に遊戯王OCGにおいてはデッキを参照するサーチカードが数多く存在するため、それらが不発にならないように複数枚積んだ方が良いだろう。

影響力は投入枚数>デッキ枚数

(表3) 各種デッキ総枚数と投入枚数による初手率および期待値

デッキ総枚数404041414243455059
デッキ投入枚数232333333
初手存在率28.08%39.43%27.44%38.60%37.80%37.04%35.60%32.43%27.94%
初手1枚率26.15%34.07%25.61%33.49%32.93%32.38%31.33%28.96%25.43%
初手2枚率1.92%5.16%1.83%4.92%4.70%4.50%4.12%3.37%2.45%
初手3枚率0.00%0.20%0.00%0.19%0.17%0.16%0.14%0.10%0.06%
期待値(枚)0.300.450.290.440.430.420.400.360.31

 (表3)はデッキ枚数と投入枚数に様々な値を入れた表。
 40枚デッキに2枚投入した場合と41枚デッキに2枚投入した場合の確率は後者が若干小さい。
 40枚デッキに2枚投入した場合と41枚デッキに3枚投入した場合の確率は後者が著しく大きい。
 直感的に明らかなことだがデッキの枚数を40枚から41枚に増やしてもデッキ全体の初手率に与える影響は大きくない。
 しかし、あるカードの枚数を2枚から3枚に増やした場合、そのあるカードの初手率に与える影響は大きい。
 例えば、あるカードデッキに3枚入れたいと思っているとする。
 しかしそのカードを入れるとデッキが41枚になってしまう。
 かと言って外すカードも見当たらない。
 40枚にするため2枚だけ入れるのが良いか、それとも41枚にして3枚すべて入れるのが良いか、という問題があるとする。
 確率の観点から見ると、そのカードが本当に3枚必要かつ外すカードが存在しないならば、41枚にして3枚すべて入れることが正解になる。
 このケースに限らず確率を踏まえたデッキ構築においては、デッキの枚数をぴったり40枚に抑えることよりも、必要なカードが必要な枚数分投入されているかの方がより重要である

初手にエクゾディアパーツが揃う確率

 デッキが40枚の場合、デュエル開始時の5枚ドローエクゾディアパーツ全てが手札に揃う確率は、658008分の1である。
 両プレイヤーが互いに初手5枚でエクゾディアパーツを揃えて引き分けになる確率は、4329億7452万8064分の1となる。
 また、1ターン目の6枚(最初の5枚+最初のターンドロー1枚)で揃う確率は639730分の1である。

 上記はエクゾディアパーツデッキにそれぞれ1枚ずつ入っている場合の確率である。  

経過ターンによるカード存在率

(表4) 40枚デッキにおける各ターン数と投入枚数によるカード存在率

デッキ投入枚数12345678
初手5枚のカード存在率12.50%23.71%33.76%42.71%50.66%57.71%63.93%69.39%
自分の第1ターンカード存在率15.00%28.08%39.43%49.25%57.71%64.96%71.14%76.39%
自分の第2ターンカード存在率17.50%32.31%44.78%55.22%63.93%71.14%77.09%81.95%
自分の第3ターンカード存在率20.00%36.41%49.80%60.65%69.40%76.39%81.95%86.32%
自分の第4ターンカード存在率22.50%40.38%54.50%65.57%74.18%80.81%85.90%89.74%
自分の第5ターンカード存在率25.00%44.23%58.90%70.02%78.34%84.53%89.08%92.39%
自分の第6ターンカード存在率27.50%47.95%63.02%74.01%81.95%87.62%91.63%94.42%
自分の第7ターンカード存在率30.00%51.54%66.84%77.60%85.06%90.18%93.65%95.95%
自分の第12ターンカード存在率42.50%67.56%82.07%90.31%97.89%97.37%98.69%99.36%
自分の第22ターンカード存在率67.50%90.00%97.11%99.22%99.80%99.96%99.99%99.99%

(表5) 40枚デッキにおける各ターン数と投入枚数による期待値

ターン11223445667891535
ドロー枚数66778991011111213142040
デッキ投入枚数766555444333321
期待値(枚)1.050.901.050.881.001.120.901.001.100.830.900.9751.051.001.00
期待値1枚との差(枚)0.05-0.100.05-0.120.000.12-0.100.000.10-0.17-0.10-0.0250.050.000.00

 (表4)は投入枚数と経過したターンドローフェイズ)という観点から作られた表。

 TCGに置いて運という要素は排除できないが、プレイヤーは理想的な回りに近づけようとデッキを組む。
 各ターンドローする確率を計算して把握することができれば、理想的な回りを実現するための投入枚数の目安が判るだろう。

 特に、コンセプトがはっきりしたデッキを使用する場合、マッチ3戦の内2戦は理想的な回りをして欲しいもの。
 つまり、66.66%以上の確率で手札に欲しいカードがあるというのが理想的なデッキである。
 具体的には初手5枚の時に66.66%以上で欲しいカードがある場合は(表4)から最低8枚のカードが必要となる。
 同様に第1ターン目なら7枚、2ターン目なら6枚、3・4ターン目なら5枚、5・6ターン目なら4枚、7ターン目なら3枚のカードが最低でも必要になる。
 これはおおざっぱに言えば7〜3枚の範囲では投入枚数を1枚増やせば1〜2ターン動くのが早くなるということでもある。
 よって、序盤の数ターンフィールドの構築や手札を整えるためには1枚の投入差でも決して無視はできないのである。

 一方、投入枚数が2枚なら66.66%以上の確率手札に来るのは12ターン目以降、1枚なら22ターン目以降とかなり遅くなってしまう。
 これはキーカード及びそれをサーチできるカードを合計で2枚以下にしてはいけないということ。
 2枚以下のカードドローを計算できず、3戦中1回来るか来ないかが普通、2回以上来たらラッキーなのである。

 しかし、逆を言えば、デュエル中に絶対にドローしたくないカードは、投入枚数を2枚以下に抑えると良いということでもある。
 序盤の手札事故の要因となりそうなカードも、同様に投入枚数を減らすことでデッキが回りやすくなる。

 また、各ターンの投入枚数と期待値については(表5)に記載する通り。
 第1ターン目は7枚、2ターン目は6枚、3ターン目は5枚、4・5・6ターン目は4枚、7・8ターン目は3枚の時に期待値が1.00に近くなっている。
 こちらも、枚数が7〜3枚という範囲に収まっているため、各ターンで動くための理想的な投入枚数というものが見えてくる。

 以上を踏まえると7〜3枚の範囲で類似したカード群をデッキに散らすことで理想的なドローを実現できるのではないかという仮定にたどり着く。
 例えば、自分の第1ターン目にリバース効果モンスターセット、第2ターンアタッカーを召喚するデッキを作るとしよう。
 そういった展開をするデッキを作るならリバース効果モンスターは7枚、アタッカーは6枚投入することで理想的な展開を行いやすくなる。

 一方で、期待値は確実なドローを保証するものではなく、ドローする確率を上げたい場合はより多くの枚数を積むべきであることに注意したい。
 期待値が1.00枚に近い時のドロー確率は60%後半から70%前半であり、高い数値だが確実に信用できる確率ではない。
 あくまでドローするバランス(引かなすぎず、引きすぎず)を考慮した指標であり、理想的な展開にならない場合のことも考えてデッキ構築に生かしていくべきだろう。

ドローカードを使った時のカード存在率

 また、上記ではドローフェイズ以外のドローについて無視していたが、ドローカードを使用した場合の確率の変動も一緒である。
 (表4)や(表5)に当てはめれば、ドローするターンをより早く迎えることと同義となる。
 具体的には《成金ゴブリン》を使えば次の1ターン《強欲な壺》を使えば次の2ターンをより早く迎えたと同じことになる。
 仮に最序盤の「1ターン目からドローする」ギミックを採用した場合、カード存在率に与える影響は大きいだろう。
 1ターンドローを早めることによって投入枚数に反してカードドローしすぎる、もしくはドローしないであろうカードドローしてしまう。
 つまり、ドローカードを使用した事が原因で手札事故が起こるという可能性が出て来るのである。
 しかし、ドローギミックが確実に作動するとも限らないので、計算するとなると非常に複雑になる。
 影響が出るほどのドローカードを採用した場合は、デッキの調整を十分に行うことが必要になるだろう。

数式

※以下の記述には、高校数学レベルの内容が含まれています。

 各表の確率計算に用いた式は、下記の通りである。
 デッキ総枚数=x 初手枚数=y デッキ投入枚数=z とする。

関連リンク