サレンダー/Surrender †
自ら負けを認め、その時点でデュエルを終了させる(降参する)こと。
英語で「降伏・降参」を意味する「surrender」に由来する。
長らくOCGには公式なサレンダーの手順がなく、現在も一部の公式大会でしか公式なサレンダー方法が導入されていない。
一方、プレイヤーの間では長らく非公式なサレンダーが行われており、今日もこれが踏襲されている。
そのため、公式に定められているサレンダーの方法と、非公式に行われてきたサレンダーの方法が異なる。
公式なサレンダーの方法 †
D .サレンダー(デュエルの敗北)の申告
デュエルの進行中に自らの敗北が決定的であると判断した場合において、デュエルの途中でサレンダー(デュエルの敗北)を対戦相手に申告し、その後速やかにジャッジに報告を行うことで、ジャッジはデュエルの敗北を適用することができる。
サレンダーはデュエルの敗北のみに適用され、マッチの敗北は申告することができない。
サレンダーを申告した結果によってマッチの成績が決定する場合や、エキストラターン中、エキストラデュエル中はサレンダーを申告することができない。
【トーナメント方式の場合】
■0勝0敗、1引き分け、1勝0敗、1勝1引き分け → サレンダーを申告できる
■0勝1敗、1敗1引き分け、2引き分け、1勝1敗 → サレンダーを申告できない
【スイスドロー方式の場合】
■0勝0敗、1引き分け、1勝0敗 → サレンダーを申告できる
■0勝1敗、1敗1引き分け、2引き分け、1勝1敗、1勝1引き分け → サレンダーを申告できない
(AREA CHAMPIONSHIP 2023 大会規定より引用)
E.サレンダー(デュエルの敗北)の申告
デュエルの進行中に自らの敗北が決定的であると判断した場合において、デュエルの途中でサレンダー(デュエルの敗北)を対戦相手に申告し、その後速やかにジャッジに報告を行うことで、ジャッジはデュエルの敗北を適用することができる。
サレンダーはデュエルの敗北のみに適用され、マッチの敗北は申告することができない。
サレンダーを申告した結果によってマッチの成績が決定する場合は申告することができない。
(AREA CHAMPIONSHIP 2024 大会規定より引用)
2023年に行われたAREA CHAMPIONSHIP 2023以降、一部の公式大会で使用されているサレンダーのルール。
従来の非公式なサレンダーとの大きな違いとして、サレンダーは対戦相手に申告→ジャッジに報告の順番で行い、相手に拒否権は無いこと、マッチの状況次第でサレンダーの可否が異なることが挙げられる。
- このルールは、2023年7月15日に行われた日本代表選考会において、大会当日の現地発表という形で初公表された。
その後、公式戦のうち「AREA CHAMPIONSHIP」では同様のルールが採用されることが、2023年7月27日に告知された。
ただし、あくまでこのイベントのルールであり、他の公式大会等では適用されていない扱いである。
- DUELIST KING CUPやAREA CHAMPIONSHIP 2024、日本選手権2024などのイベントにおいては、サレンダーに関する規定が存在する。
こちらでは、エキストラターン中、エキストラデュエル中でも、マッチの成績が決定しないならサレンダーが申告できる。
- 2023年8月5日より開催された「Yu-Gi-Oh! World Championship 2023」本戦大会では、あらかじめ公式サイトでサレンダーを行えることが告知されていた。
日本代表選考会とは異なり、マッチ中の3ゲーム目であってもサレンダーが可能となっている。
非公式なサレンダーについて †
公認大会規定には今でもサレンダーに関するルールはないが、実際には公式大会でも「勝ち目がないと判断したプレイヤーがサレンダーを申し出て、相手がそれを承諾する」という両者の合意によってサレンダーが行われる事が多い。
ただし、これは非公式のやり方なので、相手が合意しない限りは降参する事ができない。
サレンダーの申し出を受けた方は、即座に承諾してしまえば一勝を得つつそれ以降戦わなくて済み、時間短縮や敗北リスクの帳消しが行えるので、一見すると拒否するメリットはないようにも思える。
しかし、実際には以下の理由から、優勢側がサレンダーを拒否する事で戦略上有利になる事がある。
1つ目は情報アドバンテージの面。
公式大会はマッチ戦で行われるため、相手のデッキのカードを十分見ない状態でサレンダーを認めてしまうと、相手の戦術が分からずに2戦目以降を迎える事になる。
例えば、先攻の自分が初手で大量展開・制圧を行い、後攻1ターン目が始まる前に相手がサレンダーした場合、相手はマッチ2戦目の開始前にサイドデッキから自分のデッキへのメタカードを投入できるが、自分は相手のデッキタイプが全く分からない状態でサイドチェンジを行う事になる。
このため、自分の勝ちがほぼ確定しているデュエルでも、情報アドバンテージを得るために相手のサレンダーを拒否する場合がある。
2つ目は制限時間の面。
公認大会では、マッチ開始から40分が経過した時点でエキストラターンを開始し、その終了時にライフが優勢なプレイヤーを進行中のデュエルの勝者とする。
従って、マッチ1戦目が40分近く長引いており、ライフポイントが優勢で、なおかつ相手に逆転の目がないならば、サレンダーを拒否してエキストラターンを消化し、1勝0敗でマッチの勝利を得た方が良い事になる。
このように、マッチ戦におけるサレンダーは単なる勝敗を決める行為ではなく、サレンダーを申し込むタイミングや、それを認めるかどうかがマッチの勝敗に影響する戦略的行動である。
ただし「サレンダーを拒否したほうが良い状況」は存在するものの、サレンダーを拒否するということは「想定外のカードで逆転負けするリスクを増やす」行為でもある。
サレンダーを拒否されたために仕方なくデュエルを続行したところ逆転勝利できたという事例も珍しくない。
劣勢であっても安易なサレンダーは避けるべきであり、優勢でも安易なサレンダーの拒否は避けるべきだろう。
サレンダーのルールがないことの弊害について †
- 先述の通り、現在も多くの大会では、サレンダーが公式ルール上存在しない。
そのため公式大会では両者の同意がなければサレンダーを行う事ができず、またサレンダーの手順が公式に定まっていない。
これを原因とする様々なトラブルが発生しており、プレイヤーの間では「サレンダーを公認すべきではないか」「サレンダーに相手の合意を不要とすべきではないか」といった議論がしばしば発生してきた。
- 相手のデッキタイプを知るため、封殺布陣を固めた上でわざとライフポイントを削らずターンを回し続け、情報のために事実上の遅延行為を行う事が発生している。
このため、劣勢側がサレンダーを拒否される事を前提に(もしくは拒否された後)自爆特攻などでわざとライフを0にするケースも見られる。
- コンボの複雑化により1ターンを無理なく引き伸ばせるようになったため、サレンダーを拒否してエキストラターンでの勝利を狙う事例が増加している。
これにより1マッチの試合時間が長大化し、大会運営に問題が生じるケースも発生している。
- サレンダーを拒否する相手に対し、デッキをわざと崩すなどの軽微な反則行為を故意に起こし、1デュエル敗北のペナルティを受けることにより、強引にサイドチェンジに持ち込む暴挙的な手法がある。
古くは第3期の《ヴィクトリー・ドラゴン》対策として編み出され、その後上記のような時間切れ勝利のみを目指すデッキが誕生するたびに復活しては問題視されてきた。
マナーとして問題のある行為だが、そうせざるを得ないルールにも問題があると擁護する声もある。
- サレンダー可否を巡る議論においては、この「戦略的な仕切り直し」がサイドチェンジの仕組みと公平かが争点となりがちであったが、この株主主張及び実際の導入状況としては戦略性を全面的に認めた形となっている。
一方で、「次で勝つための仕切り直し」は認められるが「マッチに決着がつく降参」は認められないという、かなり珍しいルールとなった。
動画配信時の対戦が短時間でのサレンダー乱発で終わっては見栄えが悪くなるため、乱発できないように制限を付けたものと思われる。
サレンダーをルールないしマナーとして認めている事例 †
先述の公式なサレンダー以外にも、ルールとしてサレンダーが認められている場合や、マナーとしてサレンダーを受け入れるべき状況がある。
- 近年の非公認大会では、ローカルルールとしてシングルサレンダー(1デュエルのみのサレンダー)を認めている場合が多い。
この場合、相手はサレンダーを拒否することができないとされる。
- フリーデュエルでは、相手にサレンダーを宣言されたら無条件に受け入れるのがマナーであろう。
そもそもフリーデュエルは基本的にシングル戦で行われる事が多く、マッチ戦でも制限時間を設ける事が稀であるため、サレンダー可否による損得が存在しない。
- 「マスターデュエル」等、OCG準拠のゲーム作品ではサレンダーが可能である。
なお、ゲーム内での通常デュエルは原則的にシングル戦であり、制限時間も将棋等と同じ持ち時間制のため、上述のサレンダーを巡る状況とは大きく異なる。
その他 †
- 現時点でのサレンダーには「マッチ敗北に関わる場合はサレンダー不可」の規定がある。
このため、仮に《ヴィクトリー・ドラゴン》が復帰した場合でも、ジャッジ判断で「このまま進行すれば《ヴィクトリー・ドラゴン》によりマッチ決着に関わる状況である」としてサレンダー不可に該当する可能性がある。
- サレンダーを示す行為としては、原作のようにデッキに手を置く、将棋のように頭を下げる、ポーカーのように手札を表向きで卓上に置くなどが多い。
欧米では握手を求める事が通例となっている。
- 英語圏出身のプレイヤーに「surrender」と言っても通じないことがある。
英語では「(国などが)降伏する」「(強制的に)放棄する」といった強い意味を含む事の多い言葉であり、(アニメなどのように本当に命などが掛かっている場合はともかく)競技や遊戯の場では使われ辛い単語だからである。
欧米では「敗北を認める」や「投了」を意味する「concede」が一般的である。
実際、北米のOFFICIAL TOURNAMENT POLICIESには「concede」の記載はあるが「surrender」はない。
- 原作・アニメにおいて―
漫画及びデュエルモンスターズにおいては、デッキの上に手を乗せ、サレンダーを宣言する。
デュエリストにとってサレンダーは相当に屈辱的な行為として扱われる一方、「負け方を選ぶ」ために肯定的に判断する者もいる。
「王国編」において孔雀舞が《ハーピィ・レディ》の倒される姿を見たくないとして実行したのが初出だが、アニメDMでは王国前の「全国大会決勝」のダイナソー竜崎もインセクター羽蛾に対する敗北がサレンダーに変更されている。
「バトルシティ編決勝戦」では、意識を取り戻した表マリクのサレンダーにより闇マリク側のライフが0になっていく様子が描写されており、サレンダーによる敗北は自身のライフを0にする処理として扱われている。
また、アニメで海馬が「今ならサレンダーを認めてやってもいいぞ」と発言しており、アニメでも相手の同意がなければサレンダーはできないようである。
- 初登場時の表記は「スレンダー・カード」であったが、誤字であったのか文庫版では最初から「サレンダー」に訂正されている。
- サレンダーではないが事実上の降参と言える例としては、王国編の遊戯VS海馬では海馬の自殺を阻止するために遊戯が、バトルシティ編での城之内VS梶木では墓地に魂のカードを置くことができない梶木が、自滅による敗北を行っている。
こうしたサレンダー宣言以外の形での自滅も含めると「降参」そのものの頻度は比較的多い。
アニメDMでも「闇遊戯vsラフェール」(2戦目)のラフェール等で同様の自滅は発生している。
- 上記のように原作・DMでは多用されたが、GX以降は実行される事が減っていった。
アニメZEXALの「遊馬vsIII」戦のように、一方が戦意喪失によりサレンダーを求めても、相手がそれを認めない事が多い。
一方で圧倒的優勢に立っている登場人物が、対戦相手にサレンダーを勧めて(もしくは提案して)挑発する、という行為や会話上のやりとりはしばしば見られる。
- アニメ5D'sの「ジャックvsカーリー」戦のカーリー等、上述の「サレンダーではない自滅による敗北」については以降の作品でも発生している。
ARC-Vの「遊矢(途中からの参戦)vsユート」戦において、デュエルの続行を放棄する意思をユートが見せた事から、遊矢は自分のデッキをデュエルディスクから引き抜く事でデュエルを中断させている。
- 後のアニメ作品ではライフが0になる処理を行わず直接的に敗北条件の一種として扱われているようだ。
例えば、アニメ5D'sの「ジャック&龍亞&龍可vsアポリア」戦はライフが0になると死ぬデュエルだが、「サレンダーすれば生き延びられる」とアポリアが語っている。
- アニメARC-V第3話では、LDSにサレンダー原理学なる講座が存在する事が確認できるが詳細は不明。
- 漫画OCGストラクチャーズの「尚磨vsレオン」戦では、レオンが《R−ACEタービュランス》の効果が発動できない状況でモンスター効果を使い、デッキを確認してしまった。
(その前に使用した《強欲で貪欲な壺》によりデッキ内のR−ACE魔法・罠カードが全て無くなってしまったからなのだが、確認を怠っていたために気づいていなかった。)
レオン本人は自分の落ち度としてデュエルの敗北(=サレンダー)を申し出たが、対戦相手の尚磨と審判を務めていた店長が許可した事もあり、デッキをシャッフルして続行された。
公式大会ではなく、且つ拒否した理由も戦術的なところとは違うものだが、「サレンダーを申し出ても相手が認可しなければ成立しない」というルールを忠実に再現したシーンとも言える。
- 漫画・アニメではそもそもシングル戦であり、サイドデッキも登場していない。
このため、戦略的仕切り直しでありマッチ全体の降参はできない現在の一部大会規定とは、同じ「サレンダー」という言葉でも使用状況は大きく異なる。
- コナミのゲーム作品において―
DS版のゲーム作品では10ターン目以降、サレンダーで自己敗北することができるようになっている。
詰めデュエルの設定ターンは、サレンダーできるように10ターン目になっている。
WORLD CHAMPIONSHIP 2010では、5ターン目以降の設定になっている。
だが、対人戦の場合はそれより早く追い詰められてしまうケースが多く、ゲーム機の電源を切って強制終了する「切断」をするデュエリストが後を絶たない。
切断された場合、Wi-Fi対戦の成績表でカウントされるのは試合数だけで勝利数はカウントされないため、事実上勝ったにもかかわらず勝率が下がる。
このため、この行為はマナー違反であり、忌み嫌われている。
- レガシー・オブ・ザ・デュエリスト:リンク・エボリューションでは、1ターン目からサレンダーできる。
サレンダーを繰り返すのがデュエルポイントを効率よく集める手段となっている。
- 「デュエルリンクス」では、デュエル中のメニュー画面内又はドローフェイズ以外で自分のデッキをタップすると「降参(サレンダー)」の表示が出現する。
これをタップすると勿論「敗北」となるのだが、デュエル中の行動内容次第で評価得点が付与される通常のデュエルでの敗北とは異なり、デュエル中の行動内容は全く反映されず評価得点0点で固定されている。
また、対人戦の場合も通信環境やプレイヤーの操作(デュエル中に他のアプリを操作した場合等)によっては「切断」と見做されて「降参(サレンダー)」扱いとなり強制終了されるケースもある。
実装当初、「デュエルリンクス」での「降参(サレンダー)」行為はあまり問題視されてこなかったが、ランク戦等の対人戦内の「期間勝利数」システムを悪用し手段として見做した思考(詳細はこちら)や戦術が浸透するようになると状況は一変。
勝敗に関わらず一方的な内容でデュエルが終わる事態が珍しくなくなり、デュエルの駆け引きを逸脱する行為が問題視されるようになった。
この為、2018/01/24以降のアップデートで《リーフ・フェアリー》を始めとした関連カードが規制を受ける制限改訂が適用された。
また、こうした状況が影響してかランク戦イベント報酬の中に「サレンダーせずにデュエルを(決められた回数分)行った場合」が常設されるようになった。
- 「マスターデュエル」では、デュエル中に画面左上にある歯車マークをタップすると「降参」の表示が出現する。
これをタップすると勿論「敗北」となるのだが、デュエル中の行動内容次第で評価得点が付与される通常のデュエルでの敗北とは異なり、デュエル中の行動内容は全く反映されず評価得点0点で固定され、デイリーミッションの「魔法カードを◯回発動する」といった条件もカウントされなくなる。
- なお、同作ではデイリーミッションで「モンスターに○回攻撃宣言を行う」や「累計で○ポイント以上のダメージを相手に与える」が指定されることがあったが、このミッションを達成するためにフィールドを整えていざ攻撃というところでサレンダーされ、ミッションが進まなくなることも多かった。
これが理由かは不明だが、現在はミッションの内容が調整され、攻撃に関するミッションは出現しない。
- 原作・アニメ・ゲーム作品以外において―
ラッシュデュエルは「サレンダー」という例外そのものが発生しないようにデザインされている。
関連リンク †