タイミングを逃す/Missing the Timing †
公式ルールブック解説 †
《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の「墓地に送られたとき〜できる」のような、特定タイミングでの任意発動効果というものがあります。
しかし、この任意発動効果は、発動できない場合があります。
一連の効果処理の途中で墓地に送られ、一連の効果処理が終わったときには、墓地に送られたタイミングではなくなっています。
こういった場合、タイミングを逃したことになり、効果を発動できません。
たとえば、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》を生け贄にモンスターを召喚した場合、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》は墓地に送られましたが、すでにモンスターを召喚したというタイミングになっているため、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の任意発動効果を、発動することはできなくなります。
(遊戯王デュエルモンスターズ NIGHTMARE TROUBADOUR ゲーム内のルール解説より引用)
説明 †
「〜した時」が発動条件の任意効果は、その条件を満たした直後のタイミングにしか発動できず、発動が許されない状態で発動条件を満たした後、別の処理が行われてしまうと、後からはもうその効果は発動できなくなってしまう。
これが「タイミングを逃す」である。
「タイミングを逃す」事が特に多いのは、以下の3つのパターンである。
- チェーン2以降で発動条件を満たした時
- 一連の効果の途中で発動条件を満たした時
- コストやリリース、特殊召喚の素材となり墓地へ送られた事で発動条件を満たした時
- 上記のルールブックの説明は、誘発効果の発動に関しての記述に終始しているが、実際には説明の通り魔法・罠カードの発動タイミングにも大きくかかわっている内容である。
まずは誘発効果のタイミングを逃す内容について、次に魔法・罠カードのタイミングを逃す内容についてを扱う。
大きく「強制効果」、「時の任意効果」、「場合の任意効果」の三つに分けることができ、タイミングを逃す事例は「時の任意効果」に限られる。
他方、強制効果や「〜した場合」が発動条件の場合の任意効果は原則としてタイミングを逃さない。
詳しくは「時」と「場合」を参照。
難解なルールなので、できるだけ具体例を挙げて解説したい。
参考:タイミングを逃さない場合の処理 †
まず、「タイミングを逃す」の影響がなかった場合にどのように処理を行うのかについて。
《聖鳥クレイン》は、「このカードが特殊召喚した時、このカードのコントローラーはカードを1枚ドローする。」という強制効果を持つ。
強制効果のため、タイミングを逃す事はない。
例えば、他のカードにチェーンして発動された《リビングデッドの呼び声》で《聖鳥クレイン》が特殊召喚された場合、以下のように処理を行う。
- チェーン1:《貪欲な壺》を発動。
- チェーン2:《聖鳥クレイン》を対象に《リビングデッドの呼び声》を発動。
- お互いにチェーンしたいカードがない場合、効果処理に入る。
- チェーン2の効果処理時、《リビングデッドの呼び声》で《聖鳥クレイン》が特殊召喚される。
(タイミングが「《聖鳥クレイン》を特殊召喚した時」に変わり、《聖鳥クレイン》の効果の発動条件を満たす)
- チェーン1の効果処理時、《貪欲な壺》でカードをドローする。
(タイミングが「カードをドローした時」に変わる)
- 一連のチェーンの効果処理が終わった直後のタイミングで、《聖鳥クレイン》の効果を強制発動し、その効果処理時にドローする。
チェーン処理途中では新たに効果を発動する事はできないため、《リビングデッドの呼び声》で《聖鳥クレイン》が特殊召喚された直後(上記ではチェーン2の効果処理時のすぐ後)には《聖鳥クレイン》の効果は発動できない。
一連のチェーン処理が終了するのを待ってから、改めて《聖鳥クレイン》の強制効果が発動する。
タイミングを逃すパターンその1:チェーン2以降で発動条件を満たした時 †
《グリーン・ガジェット》は、「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「レッド・ガジェット」1体を手札に加える」効果を持つ。
「〜した時、〜できる」という「時の任意効果」であるため、発動条件を満たした直後に別の処理が行われると、「発動タイミングを逃した」事になり発動できなくなる。
この《グリーン・ガジェット》を先程の《聖鳥クレイン》と同じ方法で特殊召喚した場合、以下のようになる。
- チェーン1:《貪欲な壺》を発動。
- チェーン2:《グリーン・ガジェット》を対象に《リビングデッドの呼び声》を発動。
- お互いにチェーンしたいカードがない場合、効果処理に入る。
- チェーン2の効果処理時、《リビングデッドの呼び声》によって《グリーン・ガジェット》が特殊召喚される。
(タイミングが「《グリーン・ガジェット》を特殊召喚した時」に変わるが、チェーン処理中なので発動はできない)
- チェーン1の効果処理時、《貪欲な壺》でカードをドローする。
(タイミングが「カードをドローした時」に変わる)
- 一連のチェーン処理が終了したタイミングであるが、特殊召喚に成功した後に「チェーン1の効果処理時」(《貪欲な壺》の処理)の処理を行なってしまった。
発動条件を満たした直後という「発動タイミング」を逃してしまったため、「時の任意効果」である《グリーン・ガジェット》の効果はもう発動できない。
「発動条件を満たしたタイミング」は、《リビングデッドの呼び声》の処理が終了した直後である。
しかし、「(他の処理が終了して)効果の発動が可能になるタイミング」は「チェーン1の効果処理時」の処理(今回は《貪欲な壺》の処理)が終了した後である。
「時の任意効果」は発動条件を満たした直後にのみ発動ができる効果なのでこの場合発動ができなくなってしまう。
タイミングを逃すパターンその2:一連の効果の途中で発動条件を満たした時 †
一度の効果の発動の中で、複数の処理を同時ではなく順を追って処理する効果がある。
たとえば《ゴブリンドバーグ》は、まず「モンスターを手札から特殊召喚する」処理を行った後で、「自身が守備表示になる」処理を行う。
こうした効果を一連の効果と通称する。
こうした一連の効果の処理中に「時の任意効果」の発動条件を満たし、その後も一連の効果の処理が続いた場合はタイミングを逃す。
例えば、《ゴブリンドバーグ》で《グリーン・ガジェット》を特殊召喚した場合、以下のようになる。
- 《ゴブリンドバーグ》の効果を発動、処理に入る。
- 《ゴブリンドバーグ》の効果処理時、《グリーン・ガジェット》が特殊召喚される。
(ここで《グリーン・ガジェット》の効果の発動条件を満たす)
- 《ゴブリンドバーグ》が守備表示になる。
(タイミングが「モンスターが守備表示になった」時に変わる)
- 以上一連の処理が終わった直後で効果が発動できるタイミングになるが、《グリーン・ガジェット》の発動条件を満たした直後に一連の効果による処理が入ってしまったため「時の任意効果」である《グリーン・ガジェット》は発動タイミングを逃してしまう。
《ゴブリンドバーグ》の効果にチェーンし発動された《強制脱出装置》で《ゴブリンドバーグ》の効果処理時に《ゴブリンドバーグ》がフィールドを離れていたとしても、やはりタイミングは逃す裁定である。
なお、一連の効果は以降の処理が不可能の場合は途中で終了する事があり、その場合はタイミングを逃さない。
上記事例の場合、《聖なる輝き》適用中に《ゴブリンドバーグ》を「表側守備表示で」召喚し効果を発動しているならば処理が特殊召喚で終了するため《グリーン・ガジェット》の効果を発動できるようになる。
(《ゴブリンドバーグ》が守備表示になる処理が挟まれないためである)
《代打バッター》は「自分フィールドから墓地へ送られた時に発動できる。手札から昆虫族モンスター1体を特殊召喚する」効果を持つ。
「〜時、〜できる」なので、「時の任意効果」に該当し、状況次第でタイミングを逃す。
こうした墓地へ送られた事を発動条件とする「時の任意効果」を持つカードは、何らかのコストやアドバンス召喚のリリース、特殊召喚の素材として墓地へ送られた場合はタイミングを逃す。
《代打バッター》が《女帝カマキリ》をアドバンス召喚するためリリースされた場合の処理は以下のようになる。
- アドバンス召喚のために《代打バッター》をリリース。
(墓地へ送られた《代打バッター》の発動条件を満たす)
- 《女帝カマキリ》がアドバンス召喚される。
(タイミングが「アドバンス召喚する際」に変わる)
- 上記はチェーンの処理ではないが、「リリース(墓地送り)」の後で《女帝カマキリ》のアドバンス召喚をするという順番が存在し「時の任意効果」である《代打バッター》の発動タイミングを逃している。
ほとんど「一連の効果によりタイミングを逃す」パターンと同じと考えてよい。
なお、《孵化》などのカードの発動コストになった場合やシンクロ素材等になった場合もほぼ同じである。
参考:タイミングを逃すパターンとは別に誘発効果が発動できない事例 †
マスタールール(11期)の制定に伴う裁定変更以降は、タイミングを逃さないテキストであっても発動が行えない場合がある。
上述の通り「強制効果」や「場合の任意効果」はタイミングを逃す事はないが、効果の発動前に発動する場所に存在しなくなった場合は、たとえ強制効果や「場合の任意効果」でも発動できない。
上記の《聖鳥クレイン》の例で、チェーン1が《リビングデッドの呼び声》を対象とした《サイクロン》だった場合、以下のような処理となる。
- チェーン1:セットされている《リビングデッドの呼び声》を対象に《サイクロン》を発動。
- チェーン2:《聖鳥クレイン》を対象に《リビングデッドの呼び声》を発動。
- お互いにチェーンしたいカードがない場合、効果処理に入る。
- チェーン2の効果処理時、《リビングデッドの呼び声》で《聖鳥クレイン》が特殊召喚される。
(タイミングが「《聖鳥クレイン》を特殊召喚した時」に変わり、《聖鳥クレイン》の効果の発動条件を満たす)
- チェーン1の効果処理時、《サイクロン》により《リビングデッドの呼び声》が破壊される。
(タイミングが「カードを破壊した時」に変わる)
- チェーンブロックを作らない《リビングデッドの呼び声》の処理を行い《聖鳥クレイン》が破壊される。
- 一連のチェーンの効果処理が終わった直後のタイミングで、特殊召喚に成功した時の強制効果の発動タイミングが訪れるが、効果を発動する時点で《聖鳥クレイン》がフィールドに存在していないため効果は発動しない。
魔法・罠カードとタイミングを逃す †
ここまでは「タイミングを逃す」が問題になりやすいモンスターの誘発効果を例に取り解説したが、魔法・罠カードもこのルールに従わなくてはならない。
例えば《激流葬》は「モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる」という発動条件を持つため、「時の任意効果」である。
さらに言えば、《落とし穴》、《地獄の暴走召喚》など、特定の処理を発動条件とする魔法・罠カードのほとんどは「時の任意効果」である。
よって、チェーン2以降で特殊召喚されたモンスターや、一連の効果の途中で特殊召喚されたモンスターには、《激流葬》や《地獄の暴走召喚》は発動できない。
フィールド魔法がタイミングを逃す場合 †
上記の他、フィールド魔法は張替えによってタイミングを逃す事がある。
魔法&罠ゾーンとは異なり、フィールドゾーンは枠がひとつしかないため、自分の古いフィールド魔法を墓地へ送って新しいフィールド魔法を発動する事ができる。
この墓地へ送るは、コストを払う段階よりも前に起こるため、自分が新たにフィールド魔法を発動する事で墓地へ送られたフィールド魔法の「時の任意効果」はタイミングを逃す事になる。
ただし、現時点では上記のタイミングで発動できるフィールド魔法は存在しない。
詳しくはフィールド魔法を参照。
間違えやすい事例 †
- 以下のルール上の処理はタイミングを逃す原因とならない。
- 不発であっても効果処理は行われたことになる。
発動を無効にされた場合や効果を無効にされた場合との違いに注意が必要である。
詳しくは下記の具体例参照
つまり
- 「効果だけを無効」にした場合 → タイミングを逃す
- 「不発」の場合 → タイミングを逃す
- 「処理すべき効果が無い」場合 → タイミングを逃す
- 「発動を無効」にした場合 → タイミングを逃さない
その他 †
- 原作・アニメにおいて―
複雑なルールであるためか、アニメでは基本的に存在していないようである(蘇生制限と同じように、後から追加されたルールであるためという可能性もある)。
ルールがほぼOCG寄りになったアニメARC-Vにおいても、融合素材とした《EMマンモスプラッシュ》を《星読みの魔術師》(アニメ効果)の効果で帰還させている。
- アニメARC-Vでロジェがセルゲイに対して「早くしろタイミングを逃すぞ!」と言っている場面が存在する。
こちらは一般的な日本語として使われており、OCGのルールとは関係ない。
- その他の商品展開―
わかりにくいルールを大幅に削除しているラッシュデュエルでは「タイミングを逃す」という概念が発生しないように調整されている。
まず、【効果】は勿論【条件】(コストの支払い等)も含め1枚のカード内の処理は全てを同時に行う扱いである。
また、チェーンの概念がなく1つのタイミングでは1つの効果しか発動できないため、チェーン2以降の効果なのでタイミングを逃す、ということもない。
関連リンク †
FAQ †
Q:相手フィールドに《天空聖者メルティウス》と《天空の聖域》、セットされた《アヌビスの裁き》が存在しています。
自分が《サイクロン》を発動した所、《アヌビスの裁き》で自分の獣族を破壊されてダメージを受けました。
その処理直後に相手の《天空聖者メルティウス》のライフ回復と破壊の永続効果を適用しますが、この永続効果で獣族以外を破壊した場合《森の番人グリーン・バブーン》はタイミングを逃す事になり特殊召喚できなくなりますか?
A:いいえ、特殊召喚できます。(16/07/31)
Q:以下の状況で、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の効果を発動できますか?
A:いずれの状況でも、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の効果を発動することはできません。(17/03/13)
Q:《暗黒魔族ギルファー・デーモン》をリリースしてモンスターをアドバンス召喚しようとしたところ、《神の宣告》でそのアドバンス召喚が無効になりました。
この場合、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の効果を発動できますか?
A:いいえ、発動することはできません。(17/03/13)
Q:《暗黒魔族ギルファー・デーモン》をシンクロ素材としてシンクロモンスターをシンクロ召喚しようとしたところ、《神の宣告》でそのシンクロ召喚が無効になりました。
この場合、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の効果を発動できますか?
A:いいえ、発動することはできません。(17/03/13)